選手の「脳」より大事なものが? なぜアメフトは頭部の保護に「不十分」なヘルメットを使い続けるのか
The Helmet’s Real Aim
もっとも、頭に何もかぶらなかった19世紀のアイビーリーグのチームに始まり、20世紀初めの革ヘルメットの時代まで、装飾やシンボルはヘルメットに必須ではなく外観は実用的だった。1939年にスポーツ用品メーカーのジョン・T・リデルが開発したプラスチック製の安全ヘルメットも、当初は実用第一だった。
飛躍的な進歩を遂げたのは60年代だ。NFLコミッショナーのピート・ロゼルはテレビが莫大な利益を生む時代を見据え、NFLがアメリカ文化の巨人になる基盤を築いた。62年にNFLが初めて全国放映の契約を結んだときは、大半のチームのヘルメットにロゴがなかった。
ロゼルは当時新しかったテレビカメラのズームアップに目を付け、ヘルメットにロゴを付けるようリーグの全14チームに求めた。間もなくさまざまにカラフルなヘルメットが毎週、テレビ画面に映し出されるようになった。大学や高校もすぐ後に続き、ヘルメットは安全装備をはるかに超えるものになった。
コレクターズアイテムとしてのヘルメット
鮮やかな色彩と洗練されたロゴで飾られた現代のヘルメットは、ニューヨーク市、ノースウェスタン大学、地元の小さな町......など、アメリカの無数のコミュニティーを生き生きと象徴している。
野球やバスケットボールのシンボルはボールをデザインしたものが多く、アイスホッケーではスティックやパックがよく使われるが、フットボールは圧倒的にヘルメットだ。試合前のショーの装飾では、その日の目玉となる対戦を示すヘルメットが並べられる。
当然ながら、商品としても非常に人気がある。選手が試合で使ったヘルメットも、ガチャガチャのカプセルに入った小さなヘルメットも、価値の高い収集品だ。
NFLや有力な大学チームは、「オルタネート(第2デザイン)」や「スローバック(復刻版)」のヘルメットをシーズン中に着用し、売り上げに貢献している。全米の家庭の書斎やリビングには、間違いなくロッカールームよりはるかに多くのヘルメットが飾られている。
ファンにとってヘルメットは、試合と自分のアイデンティティーの物語とをつなぐ欠かせないピースだ。愛する人と観戦した試合を思い出し、チームの優勝が自然災害の惨状を癒やしてくれると期待するなど、アメリカ人が消費して、個人に属するものにしたがるスポーツの物語。ヘルメットとそのロゴは、そうした物語を彩るイラストだ。
ここにフットボールのヘルメットを安全性の面から語る科学的議論の欠陥がある。選手の脳を守れなくても、人気と利益を生み出すブランディングの中核である限り、ヘルメットが何かに取って代わられることも、根本的に変わることもないだろう。選手の頭部を守ることは重要な目的ではあるが、実際は昔から第一の目的ではなかったのだ。
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