「老いてなお、最高傑作」...巨匠スコセッシが挑む新境地、映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』の凄み
A New Scorsese Masterpiece
ディカプリオも最高の演技を見せる。哀れなアーネストはおじ(デ・ニーロが詭弁を弄する今のアメリカの政治家たちを思わせる狡猾さで演じている)にあらがう知恵も勇気もない。
3時間26分、退屈を感じさせないが、壮大なスケールと脇役陣は観客に相当の集中力を要求する。途中休憩を入れてもよかったのではないか。
スコセッシは早くもグランの別のノンフィクションの映画化に意欲的で、今年5月にローマ教皇に謁見した際はイエス・キリストについての映画を製作する意向を明らかにしている。
ネタバレは控えるが、本作のラストは実際に起きた犯罪について物語ることの道義的責任を自覚している芸術家の、かつてない自己開示と自己批判の瞬間を象徴する。監督自身と白人の観客の祖先は加害者側だった。
芸術に何ができるか、何をなすべきか。自身も観客もより大きな可能性を感じられる作品を作り続ける情熱と、老いてなお映画監督として最高傑作の1つを生み出せる能力──これらを武器に、スコセッシは今後も新境地を開拓していくに違いない。
KILLERS OF THE FLOWER MOON
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
監督╱マーティン・スコセッシ
主演╱レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ
日本公開中