最新記事
映画

荒唐無稽だけど最高のワクワク感...『ミッション・インポッシブル』最新作は、集大成にふさわしい

MI Takes On AI

2023年8月4日(金)21時30分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』に主演したトム・クルーズ

バイクで断崖絶壁からダイブする場面もスタントなし。四半世紀を経たインポッシブルなアクションにデジタル世代も引き込まれる PARAMOUNT PICTURESーSLATE

<ついに『ミッション・インポッシブル』が完結へ。アドレナリンほとばしるアクションの連続と人間の底力に酔いしれる>

36年ぶりの続編『トップガン マーヴェリック』の大ヒットから1年。トム・クルーズが再び夏のスクリーンを盛り上げる。バイクで疾走し、腕をぎこちなく振りながら駆け抜け、CGなしでスタントをこなす。『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』はシリーズ27年目の第7作にして、おそらく最後(今回は2部作の1本目)となりそうだ。

過去2作で監督を務め、3作で脚本や共同脚本を担当したクリストファー・マックァリーのおかげで、新作には「ミッション・インポッシブル」の誇りを取り戻した自信が漂っている。登場人物が自分の顔を剝ぎ取ると別の人物の顔が現れる、シリーズの名物「仮面剝ぎ」も健在だ。

 
 
 
 
 

今回もスパイの内輪もめが繰り広げられるが、過去の作品を全て見ていなくても(1本も見ていなくても)大丈夫。とはいえ、シリーズの世界観に慣れているほうがとっぴな展開も受け入れやすいかもしれない。

アドレナリンがほとばしるアクションの連続、それが私の知っている「ミッション・インポッシブル」だ。第5作『ローグ・ネイション』で離陸する飛行機の翼にしがみつく動力学的な躍動感。第4作『ゴースト・プロトコル』でドバイの世界一高いビル、ブルジュ・ハリファを安全装置なしで登る場面は、見ているこちらがゾクゾクする。

61歳の男性が死の危険に生身をさらす姿を何回でも見たくなる心理が、人間について何かを語っているかどうかは分からない。しかし、巧みに演出されたアクションや目を見張るスタントが大好きな映画ファンにとって、クルーズは自身の時間と恐ろしいほど旺盛なエネルギーを注いでその喜びを提供してくれる数少ないスターの1人だ。

シリーズは強烈な個性を放つ監督たち(ブライアン・デ・パルマ、ジョン・ウー、J・J・エイブラムズ、ブラッド・バード、マックァリー)の手を経てきたが、映画を支える真の「監督」はクルーズだ。彼の演じるイーサン・ハントが米政府内の組織IMFのエージェントとしての運命を受け入れているように、クルーズはプロデューサーとしての役割にも真剣に向き合っている。

ただし、イーサンの最も深い忠誠心は、彼がキャリアを賭してきた組織に対して以上に、親友となった仲間たちにささげられる。比喩だけでなく文字どおり崖っぷちに立たされたイーサンに遠隔で指示を出すルーサー・スティッケル(ビング・レームズ)とベンジー・ダン(サイモン・ペッグ)。イギリスの情報機関MI6の捜査官から暗殺者に転じ、さらにIMFの仲間になったイルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

伊藤忠、西松建設の筆頭株主に 株式買い増しで

ビジネス

英消費者信頼感、11月は3カ月ぶり高水準 消費意欲

ワールド

トランプ氏、米学校選択制を拡大へ 私学奨学金への税

ワールド

ブラジル前大統領らにクーデター計画容疑、連邦警察が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中