荒唐無稽だけど最高のワクワク感...『ミッション・インポッシブル』最新作は、集大成にふさわしい
MI Takes On AI
バイクで断崖絶壁からダイブする場面もスタントなし。四半世紀を経たインポッシブルなアクションにデジタル世代も引き込まれる PARAMOUNT PICTURESーSLATE
<ついに『ミッション・インポッシブル』が完結へ。アドレナリンほとばしるアクションの連続と人間の底力に酔いしれる>
36年ぶりの続編『トップガン マーヴェリック』の大ヒットから1年。トム・クルーズが再び夏のスクリーンを盛り上げる。バイクで疾走し、腕をぎこちなく振りながら駆け抜け、CGなしでスタントをこなす。『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』はシリーズ27年目の第7作にして、おそらく最後(今回は2部作の1本目)となりそうだ。
過去2作で監督を務め、3作で脚本や共同脚本を担当したクリストファー・マックァリーのおかげで、新作には「ミッション・インポッシブル」の誇りを取り戻した自信が漂っている。登場人物が自分の顔を剝ぎ取ると別の人物の顔が現れる、シリーズの名物「仮面剝ぎ」も健在だ。
今回もスパイの内輪もめが繰り広げられるが、過去の作品を全て見ていなくても(1本も見ていなくても)大丈夫。とはいえ、シリーズの世界観に慣れているほうがとっぴな展開も受け入れやすいかもしれない。
アドレナリンがほとばしるアクションの連続、それが私の知っている「ミッション・インポッシブル」だ。第5作『ローグ・ネイション』で離陸する飛行機の翼にしがみつく動力学的な躍動感。第4作『ゴースト・プロトコル』でドバイの世界一高いビル、ブルジュ・ハリファを安全装置なしで登る場面は、見ているこちらがゾクゾクする。
61歳の男性が死の危険に生身をさらす姿を何回でも見たくなる心理が、人間について何かを語っているかどうかは分からない。しかし、巧みに演出されたアクションや目を見張るスタントが大好きな映画ファンにとって、クルーズは自身の時間と恐ろしいほど旺盛なエネルギーを注いでその喜びを提供してくれる数少ないスターの1人だ。
シリーズは強烈な個性を放つ監督たち(ブライアン・デ・パルマ、ジョン・ウー、J・J・エイブラムズ、ブラッド・バード、マックァリー)の手を経てきたが、映画を支える真の「監督」はクルーズだ。彼の演じるイーサン・ハントが米政府内の組織IMFのエージェントとしての運命を受け入れているように、クルーズはプロデューサーとしての役割にも真剣に向き合っている。
ただし、イーサンの最も深い忠誠心は、彼がキャリアを賭してきた組織に対して以上に、親友となった仲間たちにささげられる。比喩だけでなく文字どおり崖っぷちに立たされたイーサンに遠隔で指示を出すルーサー・スティッケル(ビング・レームズ)とベンジー・ダン(サイモン・ペッグ)。イギリスの情報機関MI6の捜査官から暗殺者に転じ、さらにIMFの仲間になったイルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)。