「犯罪ノンフィクション」の醜悪な世界──思い込みが自らに返ってくる恐ろしすぎる映画
The Dangerous True-Crime Brain
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恋人との旅行の最中に姿を消した母親の行方を追うジューン(右)は、デジタルプラットフォームを駆使して真実を突き止めようとする TEMMA HANKIN/SONYーSLATE
<意外な展開が観客の思い込みを浮き彫りにする『#サーチ2』、犯罪を消費する現代社会のパラノイアが浮かび上がる>
現代社会は犯罪ノンフィクションという問題を抱えている。そう指摘するのは、もちろん筆者が初めてではない。
犯罪調査を行う米ポッドキャスト番組「シリアル」がブームを生み出すずっと前から、人々は恐ろしい殺人事件に心を奪われ、センセーショナルな報道を貪り、犠牲者を次々に消費してきた。
だが近年は、こうした人間の性癖をテーマにして、その醜悪な実態を照らし出す映画やドラマも登場している。
Huluが2021年に配信を開始したコメディードラマ『マーダーズ・イン・ビルディング』の主人公3人は、犯罪もののポッドキャストの大ファンで、素人探偵として複雑怪奇な事件の調査に乗り出す。
昨年公開されたB・J・ノバク監督の『ベンジェンス(原題)』は、元ガールフレンドの謎の死を利用して、自身のポッドキャストの人気アップを狙うジャーナリストの物語だ。
一方、四半世紀以上にわたって続く映画『スクリーム』シリーズは、殺人犯に熱中し、彼らをセレブ扱いする風潮をあざ笑っている。
犯罪ノンフィクション産業の暗い面をコメディー風に描く作品が多いなか、よりシリアスに向き合ったのが新作映画『search/#サーチ2』だ。
前作『search/サーチ』(18年)に続く本作は、「いいね」の数や視聴回数を稼ぐために悲劇的事件を利用する行為を検証し、それのどこが「エンターテインメント」なのか、と問いかける。
前作は行方不明の娘を捜す父親の物語だったが、今回の主人公は18歳の少女ジューン(ストーム・リード)だ。シングルマザーの母親グレース(ニア・ロング)が、新しい恋人のケビン(ケン・レオン)と旅行に出かけることにしたせいで、ぎくしゃくしていた母娘の仲は最悪になる。
前作と同様、映画の中の出来事は全て、ジューンのコンピューターの画面上で展開する。
ホームムービーの一場面として彼女の父親のことが描かれ、テキストメッセージのやりとりを通じて彼女の交友関係が見えてくる。旅先の母親が電話やメッセージに返答せず、行方不明になったと気付いたジューンの生活が大混乱に陥っていくさまも――。