二宮和也×監督対談『ラーゲリより愛を込めて』 瀬々敬久「二宮くんからお願いされたこと」
HOPE, BONDING AND LOVE
――新潟での収容所の撮影現場はほぼ男性ばかりだったと思いますが。
瀬々 スタッフに女性はいますけどね。毎日、粛々とやってた感じです。
二宮 よくコロナなどで体調を崩す人が出なかったなと思います。男ばかりで盛り上がって、じゃあ、みんなで飲もうよ!となってもおかしくない現場なのに、そういったことが一切なく体調管理が徹底できたっていうのが、みんなの映画への熱意だったのかな。
瀬々 毎日疲れて、大変だからというのもあったんだろう。雪ってしんどいじゃないですか。寒さもあるし。
二宮 なんかみんな自主的に(上着を)着なかったですよね。カメラが回ってないところでも、誰が一番初めに着るんだみたいな感じで(笑)。
収容所の所長が最初に規則を説明し、山本がみんなに通訳するシーンを半日ぐらいかけて撮ったんですけど、整列していた位置から抜ける人がいなかった。誰も座らないし、誰も動かない。あの時は、とてつもない現場になりそうだなと思いました。
たいていは監督が「こういう気持ちになれ」みたいなことを言ってそうなるけど、瀬々さんは言わない。でも、誰もその場から動かない。
瀬々 そうですね。
二宮 あれはすごいなって思いました。結構みんな大変そうでしたけど、本気だったんですよね。
でも、ある場面の撮影が壮絶だったという話を後に聞いて、心の底から「(自分は)病室にいてよかった」と思いました(笑)。
瀬々 あの日は朝から大変だったんですよ。雨が降っていて地面がびちょびちょで、そこに座らせるのがこれも大変。でも、もうスケジュールもないし、みんなが俺の顔を見るからやるしかないですよ(笑)。
翌日にはもっと雨が降っていたからね。台本には「座っていたが、立ち上がって歌う」って書いてあったけど、さすがに「ここは立ってていいから」と言った。でも桃李くんが「座ってもいいですよ」って。
二宮 彼、すごいですよね。本当に自然との戦いでもあった。桐谷くんの(感情をあらわにする)場面も、本来は雪の設定じゃなかったんですよね?