世界は「届かないとは思わない」YOSHIKIが語る日本エンタメ界の現在地と、LAで挑戦を続ける訳
世界に出ていく上で、壁が高いとか低いとかいうのは、個人の、人それぞれの感覚でしかないとも思っている。300メートルの山を高いと思うのか、3000メートルの山を低いと思うのか、それぞれの考え方次第だ。実際にハリウッドに行ってみて、意外にこの山は高かったとか、頂上は見えないけど登ってみようとか、そういうことなのかもしれない」
その挑戦する心は、子供の頃から持っていた資質なのだろうか。
「僕の父親がギブアップしてしまったわけです。人生を放棄してしまった(編集部注:父親はYOSHIKIが10歳の時に自死している)。それは大きかった。だから自分は放棄しない、と決めていた。
人はいつか死ぬ。でも生を与えられている以上、思い切り生きるということ以外にチョイスはない。
人生に、折り返し地点もないと思っている。折り返していると思う時点で、なんとなくテンション下がりません(笑)? 折り返す必要なんてない。20代の時に思っていた夢と、30代、40代、50代では違うかもしれないけれど、いつも夢はあるわけだから、そこに向かっていけばいいんじゃないかな。
今の僕は、いろんな意味でまだ全然やり切っていないので。MSGやウェンブリー、カーネギーホールなどで公演してすごいですねって言われると本当にうれしいけど、アメリカでどれだけ僕のことが知られているのかと言えば、まだhousehold name(誰もが知っている名前)ではないし。自分としても、せめてここまでやったんだって思えるかと言えば、全然納得がいっていない。
例えば100メートル走だったら何秒とかいうスコアが明白に出るけれど、芸術の世界は、一枚の絵の評価についても見方によって分かれてしまう。僕はそういうアートの世界、音楽という世界にいるので、自分が納得するまでやってみたいと思っている。
でも、弱い自分もいますよ。すごい無敵な自分もいるけれど(笑)、弱い自分もいて。でも無敵な自分が、その中でもやっぱりどこか勝っているんですよね。
本当に闘っている相手は結局は自分なんじゃないか。挑戦する先として世界という大きなものは確かにあるけれど、まずは自分に打ち勝たなければ世界には勝てないと思っている」
――構成・小暮聡子(本誌記者)
YOSHIKI
作詞家、作曲家、X JAPANのリーダーとしてピアノ、ドラムを担当。これまでに天皇(現上皇)陛下御即位十年記念式典の奉祝曲、ハリウッド映画のテーマ曲、米ゴールデングローブ賞の公式テーマ曲を作曲するなどグローバルに活動。その他、最近では世界に挑むボーイズグループのオーディション企画「YOSHIKI SUPERSTAR PROJECT X」や日本コカ・コーラ社とのコラボで誕生した「リアルゴールドX/Y」を手掛けるなど、活動は多岐にわたる。