最新記事

インド

時代遅れになるボリウッド コロナ禍と動画配信の台頭で興行不振

2022年9月5日(月)12時20分

ロイターが複数の映画ファンやプロデューサー、配給会社、映画館運営会社などの業界関係者に取材したところ、ボリウッドはもはや黙っていても観客が見込めると考えてはならず、生き残って再び隆盛期を迎えたいならば時代に順応しなければならないと訴えた。

4人の業界幹部は、業界内に広がる混乱や不安の背景をこう描写する。各製作会社はパンデミック前の市場であればヒットしたであろう作品を公開している一方、消費者の好みは動画配信、すなわちインターネット回線で提供されるコンテンツサービス(OTT)の台頭とともに変化が起き、そこにずれが生まれている、と。

インド第2位のシネマコンプレックス運営企業INOX幹部のシン・ジアラ氏は、製作サイドとのやり取りを踏まえ、プロデューサーは脚本の練り直しを急ぎ、俳優への出演料を前払いではなく興行成績と連動する形に切り替えることを検討していると明かした。

一方でジアラ氏は「本当の問題が何なのか誰も分かっていない。パンデミック期間中は映画が1本も公開されず、人々はOTTでさまざまな種類のコンテンツを視聴する時間がたっぷりあった。だから2年前に成功していたコンテンツはそれが何であれ、今ではもう全く価値がない」と話す。

ともかくも業界はすぐさま現実に適応しなければならない。

ある大学の研究によると、ボリウッド映画は収入の75%近くを映画館の興行収入に依存していることが分かった。米国映画協会のデータによると、世界全体では映画の興行収入への依存度は50%未満だ。

見えない正解

ボリウッド映画のファンからは、進化を遂げて存在感を維持することはできるとエールも送られている。例えば最近の社会情勢をより適切に反映させるために、ゲイの人たちの関係や性転換した人物を作品に取り入れることはそうした進化の1つとみなされる。

ニューデリーの大学生は「話の展開が問題で、過去2年間に視聴者は非常に多くの新しいテーマにさらされ、新しい考え方を提示されてきた。それこそボリウッドに欠けている分野ではないかと思う」と自身の見解を披露した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中