時代遅れになるボリウッド コロナ禍と動画配信の台頭で興行不振
先月はクマールさんのラクシャバンダンだけでなく、別のボリウッド大物俳優アーミル・カーンさんが主演した「ラール・シン・チャッダー」も「大コケ」し、まさにボリウッドのたそがれが鮮明になっている。ラール・シン・チャッダーは、米ハリウッドの人気映画「フォレストガンプ」のリメーク版で、祝祭の連休入り前日だった8月11日に公開されたにもかかわらず、興行収入は5億6000万ルピーと投入予算の4分の1程度に過ぎなかった。
INOXのジアラ氏は、あまりの不振ぶりに運営するシネコンでラール・シン・チャッダーの上映回数を25%減らしたと述べた。
今後公開予定で巨額予算を投じた映画2本を抱えるボリウッドのある有力プロデューサーはロイターに、各プロデューサーは新しい映画の製作に当たり、予算から脚本、出演者まで何もかも再調整していると語り、視聴者の求めるものに寄り添っていかなければならないと強調しつつも、「その正解はもう持ち合わせていない」と不安を打ち明けた。
負担感大きい映画料金
インドは他のほとんどの国・地域と同じく、人々が生活費高騰と苦闘している。それだけに映画ファンや業界関係者は、映画館で鑑賞するのに結構なお金がかかるというのも重大な問題だと指摘する。
大スクリーンを持つ映画館に4人家族で行けば、通常は3000─5000ルピー(35─60ドル)の出費。多くの国民が貧困にあえぎ、平均年収が約16万ルピーにとどまるインドでは高額だ。対照的にネットフリックスなどの動画配信サービスの月額はおよそ150ルピーでしかない。
映画プロダクションと配給会社を所有し、ボリウッド女優と結婚しているアニル・タダニ氏は「どこかで調整が必要になる。予算を組み直し、映画館に行く費用を下げなければならない。ヒンドゥー語映画産業は一般大衆からかい離しつつある。国民の大部分はこれらの映画と一体感を持たなくなっている」と危機感をあらわにした。
スンダレサンさんもタダニ氏と同じ感覚を持っている。「映画館に行ってずっと座りっぱなしで、自分のペースで鑑賞できないというのは時間の浪費に思われる。OTTで視聴した方がメリットは多い」と話す。
(Shilpa Jamkhandikar記者、Krishna N. Das記者)