自堕落で自意識が高く、愛に飢えた高校生たち...その悩みに「大人」も共感できるわけ
Love and Loss Never Go Away
表に出せなかっただけで、私たちもドラマの少女たちと同じように悩んでいたからだ。80年代、心の病は人に相談できなかった。アイデンティティーの悩みは口にできず、依存症や同性愛はタブーで、悲しみや不安を見せるのもご法度だった。社会は表現することを許さなかったが、私たちだって苦しんでいたのだ。
もちろん、『ユーフォリア』はリアリティー番組ではない。X世代の高校生が皆『ビバリーヒルズ高校白書』のような生活をしていたわけではないのと同じことだ。
それに『ユーフォリア』の高校生は80年代の高校生よりも重圧に耐え、大きな危険に脅かされているように思える。それでも彼らには、高校時代の私が見え隠れする。
青春ドラマを見るのは現実逃避なのか。もしかするとヒロインのルーとその仲間を見ていると、悩みや秘密を隠したままたくましく生き延びた自分たちに自信が持てるのかもしれない。
かつて打たれ強いX世代の少女だった私たちは成長し、タフなX世代の女になった。ドラマは10代の試練を乗り越えたことを改めて実感させ、中年期もきっと乗り切れると励ましてくれる。
いつの時代も変わらない葛藤や願い
とはいえ『ユーフォリア』に引かれたのは、『新章』よりもキャラクターに親近感を持てたのが大きな理由だ。
世代は違っても、根っこの部分でキャラクターとストーリーにはなじみがある。友人宅のパーティーで羽目を外して酒を飲み、家をめちゃくちゃにしたこと。女友達と同じ男の子を好きになったこと。親友とぎくしゃくしたこと。
ルーたちは肩パッドやレッグウオーマーこそ着けていないが、一皮むけば、そこには昔の私がいる。いつの時代もティーンはアイデンティティーと愛を求め、友情を疑い、失恋に泣き、理解されたいと願うものなのだ。
いつしか長い年月が流れたが、高校時代は昨日のことのように思い出せる。
1年生のときは、両親が留守がちな男友達の家に入り浸りだった。『ユーフォリア』の高校生ほど無鉄砲ではなかったが、最高に楽しかった。起き抜けにこの男友達の訃報を聞いたのは数日前のこと。まだ50歳の若さだった。
訃報を知り、シーズン2のセリフがよみがえった。「愛より大きな感情って何?」と友達に聞かれたルーは、「喪失感」と答える。
世代の溝を橋渡しするのは愛と喪失だ。この2つが年齢を問わず、誰にでも訪れることをルーの答えは思い出させてくれる。もっとも彼女の年でこんなことを言葉にできるのはかなり早熟で、普通はもっと時間がかかる。
頑張って、と私はルーたちにエールを送りたい。あなた方は自分で思うより強いのだから、10代の激動に鍛えられてしなやかな大人に成長するのだからと伝えたい。
だが愛と喪失だけは、決してなくならないのだ。
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