新ドラマ「ホイール・オブ・タイム」は「スローンズ」ほど不快でなく、奥深い
Not A New ‘Game of Thrones’
異能者のモイレインは竜王の再来を見つけるために、5人の候補と旅をしながらさまざまな試練を課す ©2021 AMAZON CONTENT SERVICES LLC AND SONY PICTURES TELEVISION INC.
<「おっぱいとドラゴンだけ」と言われた『ゲーム・オブ・スローンズ』とは一線を画したアマゾンの新ドラマ『ホイール・オブ・タイム』>
アマゾンプライム・ビデオで昨年11月に配信が始まった『ホイール・オブ・タイム』は、『ゲーム・オブ・スローンズ』風のファンタジー&流血バトルドラマだ。
その第1話が始まって20分頃、男女の入浴シーンがある。竜王の生まれ変わりを探す異能者モイレイン(ロザムンド・パイク)がゆったりと湯船につかっていると、彼女の護衛士ラン(ダニエル・ヘニー)が全裸で登場する。
ゆっくりと湯船に入ってくるラン。次の展開はもう分かった......とほとんどの視聴者は思うだろう。この手のドラマのお約束だ、と。
だが、モイレインとランは白濁した湯に向かい合ってつかり、旅の疲れを癒やすだけ。それぞれ天井を向いてリラックスしていると、全く別の場面に切り替わる。2人は極めて親しいけれど、あくまでプラトニックな関係であることを伝えるシーンだ。
うちにも『スローンズ』のような作品を
2016年に全世界への動画配信サービスを開始した当初、プライム・ビデオの独自制作コンテンツはコメディーや刑事ドラマが多かった。それを見たジェフ・ベゾスCEO(当時)は、もっと幅広い層をつかめるジャンルへのシフトを命じた。
ジャーナリストのブラッド・ストーンによる新著『アマゾン・アンバウンド』(未邦訳)によると、ベゾスは「うちにも『ゲーム・オブ・スローンズ』のような作品を」と大号令を掛けたという。
そこでアマゾンは17年、映画にもなった小説『指輪物語』のドラマ化権を獲得。さらに翌年には、米作家ロバート・ジョーダンの小説『時の車輪』(全14部)のドラマ化権を得た。それが『ホイール・オブ・タイム』だ。
壮大すぎる世界観を簡略化するために、ドラマでは原作を改変した部分も多い。企画・制作のレイフ・ジャドキンズは登場人物の年齢を上げ、複数の出来事をまとめ、厳粛なトーンを抑えた。その一方で、「時の車輪は数千年周期で繰り返される」という、物語の中核は変えていない。
かつての時代は男性が「絶対力」を振るっていたが、今はモイレインら女性の異能者がそれを握り、闇の勢力との終わりなき戦いに挑んでいる。また、かつての時代には竜王が闇王を破ったという記録があることから、異能者たちは、20年ほど前に生まれたとされる竜王の再来を探すことにする。ただし、それが男なのか女なのかは分からない。