新ドラマ「ホイール・オブ・タイム」は「スローンズ」ほど不快でなく、奥深い
Not A New ‘Game of Thrones’
原作は典型的なファンタジー小説で、多くの秘密を知る(があまり明かさない)吟遊詩人や、謎めいた使命のために魔法を操る女性たち、あらゆるタイプの怪物、そして呪われたアイテムなどが次々と登場する。
そのドラマ化に当たっては、同種の映画やドラマを手掛かりにしたと思われる部分も少なくない。例えば『ロード・オブ・ザ・リング』と同じように、物語は旅(竜王の再来探し)を軸に展開する。登場人物は息をのむほど美しい自然(撮影はチェコで行われた)の中を移動しながら、さまざまな試練に直面する。
だが、最も大きな影響を感じられるのは『スローンズ』だろう。CGIを駆使した壮大な映像からは、『スローンズ』同様に莫大な金をかけたことが分かる。その一方で、第1話の入浴シーンが示すように、『スローンズ』が試行錯誤の末に確立した成功パターンを、断固として拒否していると感じられる部分も多い。
決定的に異なる作中の性描写
アトランティック誌のソフィー・ギルバート記者は昨年5月の「『ゲーム・オブ・スローンズ』の性暴力が生み出したもの」と題した記事で、「由緒あるテレビ局が視聴者を刺激するものとして、そして深い心の傷となるような出来事として、実に安易にレイプを利用するようになった」と評した。
第1シーズンの全6話を見る限り、『ホイール・オブ・タイム』にヌードはほとんどない(あったとしても明確な目的がある)。レイプシーンもない。男女が思いやりを込めて互いを触る美しいシーンはあるが、それが性行為に発展することはめったにない。
『スローンズ』を見慣れた視聴者は、穏やかなやりとりが突然、不快な場面に変わるのではないかと身構えてしまうが、今のところそうしたことは起きていない。
『ホイール・オブ・タイム』は、登場人物にも深みがある。女性は男性の性的欲求を満たしたり、男性を引き立てるためだけに存在するのではなく、その内面が描かれる。また、女性に限らず登場人物全体に多様性があるが、彼らが人種ゆえに苦しむことはない。
もちろんこのドラマが完璧だと言うつもりはない。第1話で、原作では脇役の女性が主要登場人物の妻として登場するが、あっという間に殺されてしまう。だが、『スローンズ』が長年、ファンタジードラマにおける暴力と性描写のスタンダードになっていた後では、驚くほど新鮮に感じられるドラマであるのは間違いない。