人種も国籍も超えて熱狂を生む大谷翔平こそ、新時代のアメリカンヒーローだ
AN “ALL-AMERICAN” HERO
アジア系アメリカ人にとって、大谷の活躍はアジア人の強さの証拠であると同時に、自分たちがアメリカ人であることの証しでもある。大谷の技術と身体能力、際立って慎み深い態度は、アジア人に関する「引っ込み思案」で「小柄」だといった年来の偏見をひっくり返すに十分だ。いまアジア系の人たちに聞けば、大谷翔平は「われら異国で暮らす誇り高きアジア人社会の代表格」だという答えが返ってくる。
そのとおりだろうが、今年の大谷フィーバーで特筆すべきは、彼の人種や国籍を気にするファンがほとんどいない点だ。私も含め、アメリカ人はみんな、大谷を見て彼こそ当代随一のプレーヤーだと思った。今年のようなプレーをあと何年か続けたら、史上最高の選手と呼ばれてもいい。彼にはその資格がある。
彼が日本人かどうかは、彼が右投げ左打ちか、左投げ右打ちかという程度の問題でしかない。今のアメリカ人はそう思っている。イチローがアメリカにやって来た頃と比べたら、今のアメリカははるかに多様性に富み、懐が深くなっている。その変化の重さを、日本人の大谷が華麗に体現している。
この60年で、私の子供時代のヒーローたちは死んでしまった。しかし今は大谷翔平がいて、全身で「ヒーローここにあり」と叫んでいる。
そうだ、私に素敵な夢を見させてくれたアメリカの神話はまだ生きている。ヒーローは健在なのだ。大谷の卓越したプレーと素晴らしい立ち居振る舞い、そしてその人種のおかげで、アメリカ人はまた一歩、前へ進んでいける。もう人種など気にしない社会に向かって。
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