『イカゲーム』主人公ギフンの赤髪が暗示する「ゲーム続行」
WHY RED HAIR?
ゲームの真相を知った後、ギフンは理髪店を訪れる EVERETT COLLECTION/AFLO
<ギフンが最終回で紙を真っ赤に染めたのは、なぜなのか。シーズン1が終わっても、未解決の謎がある>
世界を熱狂させたドラマ『イカゲーム』は巧妙に仕掛けられた伏線や謎が満載だ(以下、ネタバレあり)。
ゲームの最後の参加者、456番のギフンが最終回で髪を真っ赤に染めたこともその1つ。
ゲームが終わり、生き延びたギフンはソウルに戻るが、幼なじみのサンウら他の参加者が凄惨な死を遂げたことなど理不尽なゲームがもたらしたトラウマに苦しんでいる。
最後のほうのシーンで理髪店を訪れた彼は、なぜか髪を赤く染めて店から出てくる。この髪の色は何を意味するのか。気になるところだ。
脚本・監督のファン・ドンヒョクは韓国のスポーツ紙のインタビューで、なぜギフンは髪を赤く染めたのかと聞かれて、こう答えている――悪夢のような出来事を体験したギフンの身になって彼がやりそうな「とんでもなくクレイジーなこと」は何だろうと考えた。そして真っ先に頭に浮かんだのがこれだ、と。
ギフンは理髪店に行く前に不可解な老人、参加者番号001のイルナムに呼び出されて会いに行く。そこでゲームが何のために行われたかを聞かされることに......。
それは信じ難いほど不条理で残酷非道な真相だった。それを聞いたギフンはショックから立ち直ろうとするが、人間心理の底無しの闇をのぞいた以上、もうノーマルな生活には戻れないのではないか──ファン監督はそう考えたのだ。
陰と陽のせめぎ合いを表す?
「(赤い髪は)彼が過去の生活に戻れないことを表していると受け取ってもらってもいい」と、監督は韓国テレビ局SBSの番組で語り、赤は怒りを表す色だとも付け加えた。
確かに、ラストではギフンは怒りをたぎらせている。彼はロサンゼルスにいる娘に会いに行こうとするが、飛行機に乗る前に謎の人物に電話をかけ、土壇場で予定を変更する。
この場面でギフンが着ている紺色のスーツと赤い髪の対比も意味がありそうだ。青と赤は韓国の国旗の中央にある「太極」を表す円の色。太極は古代の中国思想で万物の根幹を成す概念で、青は陰、赤は陽を表す。
円の上半分の赤は生命のポジティブな力、下半分の青はネガティブな力を象徴している。この2つが形作る円は陰と陽が絶えず拮抗し、バランスを取っている状態を表す。
スーツと髪の色はギフンの内面でも陰陽の力がせめぎ合っていることを暗示しているのかもしれない。最終的には陽の力が勝るが、死のゲームのトラウマを引きずっている間は陰が支配的だ。