最新記事

韓国ドラマ

『イカゲーム』主人公ギフンの赤髪が暗示する「ゲーム続行」

WHY RED HAIR?

2021年11月11日(木)20時45分
スー・キム
『イカゲーム』のギフン

ゲームの真相を知った後、ギフンは理髪店を訪れる EVERETT COLLECTION/AFLO

<ギフンが最終回で紙を真っ赤に染めたのは、なぜなのか。シーズン1が終わっても、未解決の謎がある>

世界を熱狂させたドラマ『イカゲーム』は巧妙に仕掛けられた伏線や謎が満載だ(以下、ネタバレあり)。

ゲームの最後の参加者、456番のギフンが最終回で髪を真っ赤に染めたこともその1つ。

ゲームが終わり、生き延びたギフンはソウルに戻るが、幼なじみのサンウら他の参加者が凄惨な死を遂げたことなど理不尽なゲームがもたらしたトラウマに苦しんでいる。

最後のほうのシーンで理髪店を訪れた彼は、なぜか髪を赤く染めて店から出てくる。この髪の色は何を意味するのか。気になるところだ。
20211116issue_cover200.jpg
脚本・監督のファン・ドンヒョクは韓国のスポーツ紙のインタビューで、なぜギフンは髪を赤く染めたのかと聞かれて、こう答えている――悪夢のような出来事を体験したギフンの身になって彼がやりそうな「とんでもなくクレイジーなこと」は何だろうと考えた。そして真っ先に頭に浮かんだのがこれだ、と。

ギフンは理髪店に行く前に不可解な老人、参加者番号001のイルナムに呼び出されて会いに行く。そこでゲームが何のために行われたかを聞かされることに......。

それは信じ難いほど不条理で残酷非道な真相だった。それを聞いたギフンはショックから立ち直ろうとするが、人間心理の底無しの闇をのぞいた以上、もうノーマルな生活には戻れないのではないか──ファン監督はそう考えたのだ。

陰と陽のせめぎ合いを表す?

「(赤い髪は)彼が過去の生活に戻れないことを表していると受け取ってもらってもいい」と、監督は韓国テレビ局SBSの番組で語り、赤は怒りを表す色だとも付け加えた。

確かに、ラストではギフンは怒りをたぎらせている。彼はロサンゼルスにいる娘に会いに行こうとするが、飛行機に乗る前に謎の人物に電話をかけ、土壇場で予定を変更する。

この場面でギフンが着ている紺色のスーツと赤い髪の対比も意味がありそうだ。青と赤は韓国の国旗の中央にある「太極」を表す円の色。太極は古代の中国思想で万物の根幹を成す概念で、青は陰、赤は陽を表す。

円の上半分の赤は生命のポジティブな力、下半分の青はネガティブな力を象徴している。この2つが形作る円は陰と陽が絶えず拮抗し、バランスを取っている状態を表す。

スーツと髪の色はギフンの内面でも陰陽の力がせめぎ合っていることを暗示しているのかもしれない。最終的には陽の力が勝るが、死のゲームのトラウマを引きずっている間は陰が支配的だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご

ワールド

中国、EU産ブランデーの反ダンピング調査を再延長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中