ダニエル・クレイグ版「007」完結作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』を観る前に押さえておきたい基礎知識
クレイグ版『007』の記念すべき第1作『カジノ・ロワイヤル』では、ボンドが00(ダブルオー)エージェントとなるまで、つまり「007誕生の瞬間」が描かれた。
それまでのシリーズ作品では、はじめから優秀なスパイであるジェームズ・ボンド像が描かれていたのに対し、それに至るまでの不完全さや泥臭さ、そういった人間的な揺らぎを描いたことに、最初はファンの間でも賛否両論があった。
その後の作品でも、ボンドが愛した女性(ヴェスパー・リンド)の死や、旧作でも描かれた悪の秘密組織スペクターとその首領であるエルンスト・スタヴロ・ブロフェルドとの戦いなど、過去作へのリスペクトを交えた重厚な物語が展開。史上最高の英国人スパイに至るまでのジェームズ・ボンドの生きざまが描かれていく。
この試みは、第3作『スカイフォール』で実を結ぶ。同作で全世界興行収入10億ドルを越え、シリーズ史上最高のヒットを記録。より人間らしいボンドを描くことで、クレイグ版『007』は新境地を開いたのだ。
その時代の現実を反映させてきた『007』シリーズ
ダニエル・クレイグという役者を得て、スタイリッシュに生まれ変わった『007』シリーズ。その最終作といわれる『ノー・タイム・トウ・ダイ』の物語は、ジャマイカから始まる。
前作でスペクターとの熾烈な戦いを繰り広げたボンドは、任務から退き、南国の地で穏やかな暮らしを送っていた。そこへ突然、ボンドの盟友フェリックス・ライターがやって来る。
彼の頼みを聞くことにしたボンドは、任務に復帰。CIAの女性エージェントであるパロマ(アナ・デ・アルマス)、00エージェントのノーミ(ラシャーナ・リンチ)と組んで、今回の事件に潜む闇を探っていく......。
第4作『スペクター』で、シリーズを通じてボンドとMI6の敵対勢力であった秘密組織スペクターとの戦いが決着し、クレイグ版ボンドの物語はひとつの結末を迎えたかに思えた。しかし、ボンドにはまだ清算しなければならない事件があるようだ。
物語もさることながら、キャストの起用にも注目が集まる。