最新記事

メディア

「一番見るのはヒカキン」と話す盲学校の生徒たち YouTubeやゲームが大好きな彼らはどうやって「見る」のか

2021年7月9日(金)19時34分
Screenless Media Lab. *PRESIDENT Onlineからの転載

スマホやタブレットのテキスト読み上げ機能の発展は著しく、特に倍速機能を利用すれば、数多くの読書が可能となる。したがって、集中してじっくり読む時は点字デバイスを、多くの読書には音声読み上げと、さまざまなツールを用いた情報体験が可能になっているのだ。

「視覚障害者にとって、スマホは圧倒的なゲームチェンジャーだった」と先生たちは言う。

スマホは音声入力、音声読み上げなど、視覚障害者の困りごとを補い、視覚世界を音に変換するツールとして圧倒的な力を発揮した。視覚障害者の意思に応え、目の代わりとなって、彼らが「知りたい」と思ったこと、「今これが見たい」と思ったことをその場で「見せてくれる」ツールなのだ。

われわれがもっていた傲慢で誤った期待

今回の取材でわれわれは、寺山修司が1984年に投げたと同じ、色に関する質問もしてみた。

だが生徒たちの答えは、40年前とはまったく変わっていた。

空は青であり、太陽は赤、金属の色は銀色だという。わざわざ音に変換するようなことはなく、表現的にも感覚的にも健常者と何も変わらない。

なぜそうなったのか。それは情報量の圧倒的な増加が生んだ変化だった。

今も昔も、目の見えない子どもたちは直接、青い空を「見る」ことはできない。けれども今の子どもたちは、青い空を称える詩や小説を大量に「読む」ことができる。さまざまな作家の目を通じて、色の概念を身につけている。その感覚は健常者であるわれわれとほとんど変わらないものである。だから今、視覚障害者である彼らにとっても、空は生き生きとした青色なのだ。

われわれは「かつて寺山修司が見出した、視覚障害者特有の感性的な豊かさを、現代において再確認したい」という、今思えばいかにも健常者の傲慢さが漂う狙いをもって、40年前に寺山が行ったのと同じ盲学校に取材を申し入れ、生徒たちに同じ質問を投げかけた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米自動車販売、第1四半期は増加 トランプ関税控えS

ワールド

イスラエル「ガザの食料十分」、国連反論 物資不足で

ビジネス

トランプ氏、TikTok巡る最終案を2日に検討=米

ワールド

ロシアが和平交渉停滞なら制裁へ、米上院超党派議員が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中