「一番見るのはヒカキン」と話す盲学校の生徒たち YouTubeやゲームが大好きな彼らはどうやって「見る」のか
効果音で格闘ゲームをプレイ
生徒たちに「ふだんは何をして遊んでいますか」と聞くと、「ゲーム」「対戦ゲーム」という答えが返ってくる。健常者の高校生となんら変わりないが、彼らは音によってキャラクターの動きを聞き分けているという。
健常者はほとんど意識していないが、対戦ゲームではキャラクターの動きに常に効果音が伴っており、その音にもすべて異なる意味がある。パンチを打ったときの音とキックを放ったときの音は異なり、キャラクターが跳躍し、着地したときの「シュタッ」という音ひとつをとっても、キャラクターごとに違うのだ。
動作ごとに効果音がつき、その音が動作ごと、キャラクターごとに異なっているので、彼らは音の組み合わせによって攻防の様子を知り、「今、何が起こっているのか」を聞き取ることができるのだ。
ほどよく作り込まれたゲームでプレイ
ただし、すべてのゲームがそこまで細かく作り込まれているわけではない。
作り込みができていない、音的にチープなゲームは視覚障害者にはプレイできない。取材中、遊んでいるゲームとして生徒たちが挙げたのは『ドラゴンボール』や『ワンピース』のバトル系のゲーム、『ストリートファイターII』の特定のバージョンなどだった。
『ストリートファイターII』は左右に配置されたキャラクター同士が戦う、2Dタイプの格闘ゲームである。戦闘中にキャラクター同士が入れ違い、左右逆になることもある。
比較的初期のバージョンでは、キャラクターごとの効果音はモノラルで、右に配置されたキャラクターの音は右からだけ、左に配置されたキャラクターの音は左からだけ聞こえるようになっていた。それであれば彼らは、キャラクターが左右入れ替わったときにもすぐに聞き分けることができる。
しかしバージョンが上がっていくと、音響が健常者目線でリッチになり、両方のキャラクターの音が左右から同時に聞こえてくるステレオフォニックな作りになっていく。
そうなると生徒たちには、モノラルだったときには判断できた、音によるキャラクターの位置関係の判別ができなくなってしまうのだという。
スマホの登場が視覚障害者の世界を変えた
情報技術の発展によって、これまで辞書のように大きかった点字の本も、点字デバイスの改良によって、読みやすさは格段に向上しているという。また、文京盲学校の生徒たちの中には、一般の高校生以上にたくさんの本を読んでいる人もいる。特に近年、生徒たちの状況に大きな変化が生じたからだ。
文京盲学校のある先生は、盲学校に勤務した後、5年ほど一般の高校に異動になり、最近また戻ってきたのだが、「異動でいなかった5年の間に、劇的に変わっていた」と言う。その大きな変化とは、スマートフォンの普及だった。