最新記事

メディア

「一番見るのはヒカキン」と話す盲学校の生徒たち YouTubeやゲームが大好きな彼らはどうやって「見る」のか

2021年7月9日(金)19時34分
Screenless Media Lab. *PRESIDENT Onlineからの転載

効果音で格闘ゲームをプレイ

生徒たちに「ふだんは何をして遊んでいますか」と聞くと、「ゲーム」「対戦ゲーム」という答えが返ってくる。健常者の高校生となんら変わりないが、彼らは音によってキャラクターの動きを聞き分けているという。

健常者はほとんど意識していないが、対戦ゲームではキャラクターの動きに常に効果音が伴っており、その音にもすべて異なる意味がある。パンチを打ったときの音とキックを放ったときの音は異なり、キャラクターが跳躍し、着地したときの「シュタッ」という音ひとつをとっても、キャラクターごとに違うのだ。

動作ごとに効果音がつき、その音が動作ごと、キャラクターごとに異なっているので、彼らは音の組み合わせによって攻防の様子を知り、「今、何が起こっているのか」を聞き取ることができるのだ。

ほどよく作り込まれたゲームでプレイ

ただし、すべてのゲームがそこまで細かく作り込まれているわけではない。

作り込みができていない、音的にチープなゲームは視覚障害者にはプレイできない。取材中、遊んでいるゲームとして生徒たちが挙げたのは『ドラゴンボール』や『ワンピース』のバトル系のゲーム、『ストリートファイターII』の特定のバージョンなどだった。

『ストリートファイターII』は左右に配置されたキャラクター同士が戦う、2Dタイプの格闘ゲームである。戦闘中にキャラクター同士が入れ違い、左右逆になることもある。

比較的初期のバージョンでは、キャラクターごとの効果音はモノラルで、右に配置されたキャラクターの音は右からだけ、左に配置されたキャラクターの音は左からだけ聞こえるようになっていた。それであれば彼らは、キャラクターが左右入れ替わったときにもすぐに聞き分けることができる。

しかしバージョンが上がっていくと、音響が健常者目線でリッチになり、両方のキャラクターの音が左右から同時に聞こえてくるステレオフォニックな作りになっていく。

そうなると生徒たちには、モノラルだったときには判断できた、音によるキャラクターの位置関係の判別ができなくなってしまうのだという。

スマホの登場が視覚障害者の世界を変えた

情報技術の発展によって、これまで辞書のように大きかった点字の本も、点字デバイスの改良によって、読みやすさは格段に向上しているという。また、文京盲学校の生徒たちの中には、一般の高校生以上にたくさんの本を読んでいる人もいる。特に近年、生徒たちの状況に大きな変化が生じたからだ。

文京盲学校のある先生は、盲学校に勤務した後、5年ほど一般の高校に異動になり、最近また戻ってきたのだが、「異動でいなかった5年の間に、劇的に変わっていた」と言う。その大きな変化とは、スマートフォンの普及だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米コロンビア大、全校規模の卒業式中止 ガザ反戦デモ

ビジネス

フランス自動車業界、2027年までにEV販売4倍増

ワールド

メーデー連休中の中国新築住宅販売、前年比47%減少

ビジネス

米新興EVのルーシッド、今年の設備投資の増大見込む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 2

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中