「男性」「女性」という言葉が出てこない、あらゆる人のためのセックス・ハウツー本
Napadon Srisawang-iStock.
<愛の国フランスで13万部のベストセラーになった『あなたのセックスによろしく』が日本上陸。挿入を必ずしも前提としていないという、ユニークだが真面目で楽しい本だ>
※本稿は一部書店で配布される『あなたのセックスによろしく――快楽へ導く挿入以外の140の技法ガイド』(ジュン・プラ著、CCCメディアハウス)の特製パンフレットに寄せられた解説文を転載したものです。
まずタイトルに少しびっくりした。ただ読んでみると、デリケートな問題を真面目に楽しく扱った良い本だった。
フランス語の原題は『快楽クラブ~喜びへの地図作り』といった感じになる。それに対して邦題の『あなたのセックスによろしく』は敢えて日本語としてこなれない表現を使っているが、これは本書第1部のタイトルから来ている。
Dis bonjour à ton sexe.なので英語にすればSay hello to your sex.
「よろしく」という意味にもなるが、直訳すれば「あなたのセックスに『こんにちは』と言おう」というもので、要は恥ずかしさや警戒心を取っ払って、自分のセックスと向き合おうというメッセージから始まっている。
私は実は女性向けポルノを男性向けのものと比較する小文をいくつか書いている(「女性向けポルノ」に見る男性の「独りよがり」〔東洋経済オンライン2015年1月15日〕等)。
そこで感じたのは、女性向けのものは挿入までの時間がとても長く、お互いの感情の高まりをゆっくり表現したり、女性自身の内面の吐露が多く見られたりすることだった。
その対比で男性向けのものを見ると、とにかく挿入と激しいピストンとで女性があえぎまくることになっている。男性の願望の投影なのかも知れないが、あまりに身勝手な気がするし、ものすごく体力を消耗しそうに思われる。
それに対し本書は、まずそもそも挿入を必ずしも前提としていない。この点は邦訳の副題に「挿入以外の140の技法」という表現で示されている。
もちろん挿入が否定/排除されているわけではないが、オーラルセックスや指を使ったものなど、クリトリスや膣やペニスのどこをどんな風に触ると快感が得られるかがイラストとともに詳しく描かれている。そしてそれらはとってもスローだ。
「○○をゆっくりと指で回すように触って」など具体的で、かつ相手の反応を確認しながら進めることが大事だと強調されている。よくまぁこれだけテクニックがあるもんだと驚いたし、女性器にまつわることはもちろん、男性器についてもけっこう知らないことがあり、まさに「こんにちは」と挨拶していろいろなことを教えてもらうような気分になった。
イギリスのコンドームメーカーDurex社の調査では、日本は調査対象国のうち世界で最もセックスの頻度が低い社会とされている。一方で年齢とともにセックスの頻度が落ちていくのは当然の現象だ。
ただそれに対して本書は、それをおじさん向け週刊誌のように「死ぬまでセックス!」と煽るのではなく、パートナーと相談しながらゆっくりとどこが気持ちいいか見つけられるように提案している。