「私は恵まれていたが、ディケンズで社会の不平等を知った」哲学者マーサ・ヌスバウム
12歳の頃は長編に夢中だった。特に好きだったのが『デイヴィッド・コパフィールド』と『ニコラス・ニクルビー』(邦訳/こびあん書房)。どちらも貧しく腹をすかせた子供の物語だ。1人は工場で働くことを強いられ、もう1人は「学校」に送られるが搾取やいじめに遭う。
『デイヴィッド・コパフィールド』
チャールズ・ディケンズ[著]
邦訳/新潮社ほか
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
ディケンズは、法律や社会構造を変えなくても、個人の道徳的な気付きだけで正義は達成できると、間違った示唆をしている。だが、心を改めるだけでは不十分だとしても、それが必要なことも確かだ。
彼の小説は、自分がいかに恵まれているかを改めて考えさせ、ほかの人々に目を向けるよう促してくれた。
<2020年8月11日/18日号「人生を変えた55冊」特集より>
【関連記事】
・民主主義が嫌悪と恐怖に脅かされる現代を、哲学で乗り越えよ(マーサ・ヌスバウム・インタビュー)
・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死
・太田光を変えた5冊──藤村、太宰からヴォネガットまで「笑い」の原点に哲学あり
・日本人の「集団主義」「同調圧力」には良い面も悪い面もある
2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか