新型コロナ時代に殴り込み、短編動画サブスク「クイビ」って何だ!?
Selling Entertainment in Quick Bites
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クイビは「クイックバイト(軽食)」の略だ ILLUSTRATION BY ALEX FINE
<映画界の重鎮らが挫折を乗り越えて再挑戦する、新たなストリーミングサービスの品質はハリウッド級>
今年2月のスーパーボウルで、カンザスシティー・チーフスがサンフランシスコ・フォーティーナイナーズに大逆転勝利した試合でのこと。テレビ中継では、銀行強盗一味の運転手がスマートフォンで「クイビ(Quibi)」に夢中になるあまり車を発進させず、強盗らが大慌てになるというコマーシャルが流れた。アメリカ中のお茶の間やスポーツバーからこんな声が聞こえてくるようだった。「クイビって何だ!?」
クイビは月額4.99ドルの動画サブスクリプションで、4月6日からサービスを開始する。ハリウッド並みの制作力が売りで、1本4〜10分間の番組が数十本提供される。クイビというのは「クイックバイト(軽食)」の略だ。
このプロジェクトは、スティーブン・スピルバーグらと共にドリームワークスSKGを設立したことで知られる映画プロデューサー、ジェフリー・カッツェンバーグのアイデアから生まれた。
クイビのCEOはネットオークション大手eベイの元CEOメグ・ホイットマン。同社はディズニーやソニー・ピクチャーズエンタテインメント、中国のアリババなど、巨大企業から10億ドルもの資金を調達した。
クイビのアイデア自体は新しいものではない。ドリームワークスは1999年、プロが制作した短い動画コンテンツの配信サイト、ポップドットコムを立ち上げた。投資家から5000万ドル以上を調達したが、パートナー企業との交渉決裂などからサービス開始前に頓挫した(スピルバーグらはこの時からクイックバイトの言葉を使っていた)。
2015年には、米大手携帯電話事業者のベライゾン・コミュニケーションズがミレニアル世代を対象に動画配信サイト、Go90(ゴーナインティ)を立ち上げたが、番組の質が悪くそっぽを向かれた。
新型コロナで好機到来?
先駆的な構想から20年。ネットの回線速度は圧倒的に速くなり、スマホはいつでもどこでも接続可能に。短い動画の需要と収益性の高さは、Youtubeが証明している。
1月に開催された世界最大級の家電IT見本市、CESでのプレゼンテーションで、カッツェンバーグは「エンターテインメントの革命」としてクイビを大々的に取り上げた。彼は、18~44歳の消費者が1日に外出先でコンテンツを視聴する時間は8年前の6分から80分に増加していると語った。「この新技術の力で短編映画を提供したらどうなるだろうかと思い始めた」