新型コロナウイルスにジェームズ・ボンドも倒れる? 新作から映画祭までコロナショックに飲み込まれた映画界
『NO TIME TO DIE』の宣伝は既に昨年末から始まっていたが……。写真は昨年12月4日ロンドンに登場した同作のポスター Lisi Niesner - REUTERS
<007もミッション・インポッシブルも、見えないウイルスに屈してしまうのか>
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスは、収束するどころか感染は拡大するばかりだ。毎日のように更新される悲惨なニュースに心も滅入ってしまう。こういうときこそ、エンターテインメントのパワーが必要なのだが、残念なことにコロナウイルスの影響は世界規模で映画界にも影を落とし始めている。
日本でも根強い人気がある「007ジェームズボンド」シリーズ25作目となる新作『NO TIME TO DIE』が、コロナウイルスの影響で公開延期されることとなった。当初3月末にイギリスで、その後4月上旬にアメリカ等各国で公開予定だった。
しかし、コロナウイルスの感染が世界規模で拡大したことによって、公開を半年繰り下げ、イギリスでは11月12日、アメリカ他各国では翌週末11月25日に封切られることが公式に発表された。
この延期により発生する損失は、なんと3000〜5000万ドルと報道されている。2月に開催されたスーパーボウルでの映画宣伝費だけでも、制作のMGMが支払った額は450万ドルと言われている。しかし、それでも今映画館に集客が見込めない状態で公開するよりも損失は少ないと踏んだのだろう。逆に公開をずらしたことがニュースで報じたため、これが宣伝となり怪我の功名となったともいえる。
映画館が危機的状況に
エンターテインメント業界でも、特に映画館は密閉された空間というイメージがあるため、客足が遠のいている。イギリスBBCの4日報道によればコロナウイルスによる今年の全世界のボックスオフィス損失は、50億ドルに上るだろうと発表されている。
また、ハリウッドレポートによると、現在世界第2位の映画市場を誇る中国では、主要映画館7万館が閉鎖されたため、映画業界は大きな損失がでているという。映画館閉鎖後、約20日間のチケット収益は中国全土でわずか390万ドル。昨年の同時期の集計は15億ドルを超えており、実に380分の1にまで落ち込んでいる。その違いは一目瞭然だ。
一方、中国はその経済力で、ハリウッド映画にも多くの作品に出資しているため、今年下半期以降の映画制作に世界規模で影響が出るかもしれない。
映画撮影現場でもコロナパニックが発生し始めている。映画『ミッション・インポッシブル』の続編パート7は、イタリアでの撮影が進められていたが、先月から急激にコロナウイルスの感染拡大が進んだため、撮影が延期された。
制作のパラマウントピクチャーズは、当初パート7は、2021年7月23日、パート8は2022年8月5日公開予定と発表していたが、このまま延期が続き、撮影スケジュールがずれ込むと、公開日変更の可能性がある。
また、ソニーピクチャーズのロンドン撮影スタジオでは、スタッフの感染が疑われ、スタジオを緊急閉鎖した。ヨーロッパでの感染が拡大していることを考慮して、現在ソニーピクチャーズはロンドン/パリ/ポーランド等に位置する会社を一時閉鎖している。