最新記事

私たちが日本の●●を好きな理由【韓国人編】

「短歌は好きのレベルを超えている」韓国人の歌人カン・ハンナは言った

2020年2月11日(火)18時05分
朴順梨(ライター)

magSR20200211korean-kanghannah-3D.jpg

NHKの『短歌de胸キュン』『NHK短歌』に出演し、角川短歌賞に3回入選するなど腕を磨いてきた MAKOTO ISHIDA FOR NEWSWEEK JAPAN

最初は出演者の1人に過ぎなかった。しかし2016年を皮切りに3年連続で角川短歌賞に入選するなど、めきめきと腕を上げた。その驚きも含めて、番組共演者たちは祝いのコメントを寄せていたのだ。

短歌の何にそんなに魅了されたのか? そう尋ねるとすっとシリアスな表情になり、「好きのレベルを超えている」と答えた。

「角川短歌賞に応募する際には、まず200~300首を詠む。そこから削って50首にまとめるが、『私はどういう人間なんだろう』って見つめ直さないと流れをつくれない。私らしさを31文字に凝縮するために、自分自身の過去や見たくない部分を見ないとならなかったので、とてもしんどかった」と、彼女は言う。

「でも、その作業をしていくうちに短歌=私になって、好きとか魅了のレベルを超えていった。今は短歌を通して、自分自身を表現しているところです」

magSR20200211korean-kanghannah-5C.jpg

MAKOTO ISHIDA FOR NEWSWEEK JAPAN

厳島神社の経験が原点

歌人・タレントの活動をしながら大学院に通うのは、日本人であっても簡単なことではない。しかし学者と歌人のどちらも自分だからと、両立を決意している。その決意の根底にあるのは初めて日本を訪れた2006年の体験だ。

ツアー旅行で、行き先は広島だった。厳島神社で「この神聖な場所は何だろう」と圧倒された彼女は、「何百年も続く歴史を守り続けていくことや、生活の隣に祈る場が存在している日本の姿に尊敬の気持ちを持ち、日本をもっと知りたいと思った」と語る。

その後、来日。日本を知るだけでなく、「活動を通して日韓の懸け橋になれたら」と思うようになったが、それこそが両立を目指す理由だ。

「私の発言が韓国人の総意として捉えられてしまっては危険なので、メディアに出るなら歴史や文化を知る必要があると気付いた。本当にまだまだの私だけど、勉強しながら成長していけるのではないかと思っているので、短歌も勉強も続けていきたくて」

歌集の『まだまだです』というタイトルには、この言葉自体が好きな気持ちと、未来の可能性への希望の両方が込められていると明かす。

「自分自身の可能性に期待できる気がするから、『まだまだです』って日本語がすごく好きで。今よりもっと伸びるかもしれないと、前向きな気持ちにさせてくれるところが素敵だと思うし、読者にもそういう意味がある言葉だと、再認識してもらいたい。私は日本の方たちに支えられたことで、『まだまだです』という謙虚な言葉の意味や魅力に気付いたから」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中