最新記事

健康

「人生100年なのに医療は人生70年設定のまま」が引き起こす問題

2019年9月2日(月)18時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

akiyoko-iStock

<医療の発展によって長寿化が進む今日。しかし、「健康なまま死に至るのは20人に1人」と言われており、長く生きることが必ずしも充実した人生に直結するとは言い難い。「健康」でも「病気」でもない、医療が見落としてきた「老化」と正しく向き合うためには>

「死ねない時代」

間もなく到来する人生100年時代をそう呼称するのは、東京慈恵医科大学教授・行動変容外来診療医長兼慈恵医大晴海トリトンクリニック所長の横山啓太郎氏。

厚生労働省によれば、2018年の日本人の平均寿命は男性で81.25歳、女性は87.32歳を記録。男女ともに過去最高の数値を更新し、世界トップクラスの長寿国だ。寿命100年の現実へと真っ先に突入すると予測されている。

しかし、こうした長寿化を手放しに喜ぶことはできない。

医療の発展によって脳卒中や心筋梗塞をはじめとする「急性疾患」で命を落とすことは減ったが、長生きには認知症や寝たきりといった「老化」によって引き起こされるリスクが伴う。

いくら寿命が延びても「健康なまま死に至るのは20人に1人」だと、横山教授は語る。

健康を管理することの大切さは誰もが知るところだが、不確実な年金支給や終身雇用の崩壊によって現役年齢が引き上げられるため、これまで以上に「健康なまま」歳をとっていくことが重要になる。資本としての体の価値はますます高まるばかりだ。
20190903healthmanagementbook-cover200.jpg
横山教授はこのたび、長生きに伴うリスクを解説し、主体的に健康な生活習慣を獲得していく必要性とその方法について提案すべく、『健康をマネジメントする――人生100年時代、あなたの身体は「資産」である』(CCCメディアハウス)を刊行した。

「病気」ではない「老化」を正しく見つめ、ときに世界的ベストセラーで紹介される思考法まで交えながら「マインドセット」と「習慣」の改善を目指す一冊だ。

ここでは本書から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。第1回は、長寿化リスクの正しい位置づけと現代医療の構造的欠陥について。

◇ ◇ ◇

急性疾患にいまだに重きがおかれている

認知症や寝たきりがそれほど増えるならなるべく健康維持につとめ、できるだけ「ピンピンコロリ」でいきたい──。それが私たちの願いでしょう。

しかし、その健康維持のための努力をつづけていくのにみんな苦労しています。カロリーの高い食事、甘いスイーツ、お酒......。健康に悪いことは、楽しいものばかりです。「わかっちゃいるけどやめられない」それが現実です。

問題はそれだけではありません。私たちの人生100年をサポートしてくれるはずの現代医療にも問題が横たわっています。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 9
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 10
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中