利他の心に立つ稲盛和夫が活用する京都の日本庭園「和輪庵」
七代目小川治兵衛については、次の無鄰菴(むりんあん)で詳しく述べますが、和輪庵も小川治兵衛によって作庭されました。東山界隈は普通、西側に居を構えて、東山を借景にする形が多いのですが、和輪庵は、敷地の東側に建てられた西向きの建物から、西側の真如堂や金戒光明寺の丘を望めるようになっています。つまり、真如堂や金戒光明寺(こんかいみょうじ)の文殊堂が、借景として望めるのです。
1980年に京都セラミック(現京セラ)の所有となり、今は京セラの迎賓館として、特別な客を迎える場所となっています。
私は、和輪庵にて京セラのジュエリー展が開催されていた期間に、庭を観る機会を得ました。池泉式なので、庭の真ん中に池が広がり、舟も繰り出せるようになっていますが、意外に池がこぢんまりしているなというのが実感でした。池は、東側に建つ洋館から、北側の和の建物へと繋がっていました。池の手前の芝生地に立つと、美しい景色がまるで絵のようでした。紅葉のときで、モミジと松のコントラストが美しかったです。植栽中心の庭なので、控えめに燈籠や橋が配置されていました。
庭は一周できるので、巡るうちに東山が借景となります。残念ながら、樹々が高く茂り庭からは、永観堂や金戒光明寺を見ることはできませんでしたが、洋館の二階からは、庭越しに借景が望めるのではないでしょうか。
世界貢献のために京都賞を立ち上げ、その受賞者を迎えるために、和輪庵は京セラ迎賓館として、おもてなしの場所となりました。海外から訪れた受賞者は、紅葉の美しい庭の景色に目を奪われることでしょう。利他の心に立つ稲盛は、この庭園の素晴らしさをおもてなしの場所として最大限に活用しているのだと思います。
※第2回:京都を愛したデヴィッド・ボウイが涙した正伝寺の日本庭園
※第3回:三菱財閥創始者・岩崎彌太郎が清澄庭園をこだわって造り上げた理由
『一流と日本庭園』
生島あゆみ 著
CCCメディアハウス
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