最新記事

日本文化

利他の心に立つ稲盛和夫が活用する京都の日本庭園「和輪庵」

2019年5月21日(火)19時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

稲盛和夫と京都賞

稲盛は、日本初の国際賞である「京都賞」を始めました。きっかけは、かつて、セラミックで素晴らしい研究開発をしていたときに、東京理科大学の教授が自身のポケットマネーで、技術開発に懸賞金を与えていたことでした。事業も成功しお金もある自分が、今度は賞を与える側に立つべきではないかという心の声が聞こえたそうです。

「差し上げるならば、ノーベル賞に次ぐ立派な賞を」と、私財の200億円をつぎ込んで、京都賞を作りました。これは、人類の科学や文化の発展に貢献した者を表彰する目的で、1984年に立ち上げられました。

毎年、「先端技術部門」、「基礎科学部門」、「思想・芸術部門」の各部門に一賞、計三賞が贈られます。受賞者には、京都賞メダルと賞金一億円が与えられます。京都賞は、稲盛財団によって運営されています。

2016年に、京都賞の基礎科学部門で受賞した京都大学の本庶佑(ほんじょたすく)氏が、2018年、ノーベル賞の生理学・医学賞を受賞しました。京都賞がノーベル賞の前哨戦と言われる所以です。2012年に、iPS細胞でノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の山中伸弥氏も2010年に京都賞を受賞しています。

また、稲盛財団の寄付により、2008年に米国ケースウエスタンリザーブ大学「倫理と叡智のための稲盛国際センター」が設立されました。ここでは、模範的な倫理のリーダーシップを実践し人類社会に多大な貢献をした個人を讃えて、稲盛倫理賞が授与されます。

実は、この賞は稲盛の肝いりだったそうですが、倫理という抽象的なことが日本では賛同を得られず、アメリカの大学がこの趣旨に賛同して制定を迎えたそうです。

こちらも、2014年にこの稲盛倫理賞を受けたデニス・ムクウェゲ氏が、2018年のノーベル平和賞を受賞しました。ムクウェゲ氏は、戦争に端を発する性的暴行被害者を救済するとともに、女性の人権擁護のために献身的な活動を続けているという功績が、ノーベル賞でも稲盛倫理賞でも受賞理由となりました。

ちなみに、この機関は、世界中に倫理的なリーダーシップを育てることを目的に、教育・研究活動を続けています。社会、さらには世界に貢献する人々に寄り添う京都賞および稲盛倫理賞は、京セラフィロソフィ「利他の心」が国境を超えて、世界貢献に広がっている証だと思います。

和輪庵

和輪庵(旧蒲原達弥邸)は、京都・南禅寺界隈の別荘庭園群のなかでも、名高い名園の一つです。

――和輪庵にほど近い明治23年(1890)に竣工した琵琶湖疏水分線に沿っての散策路は、現在『哲学の道』と称され多くの京都市民や観光客に親しまれている場所でもあります。蒲原はこの地に建物から西面の真如堂や金戒光明寺の借景を取り入れた庭園を造営しました。作庭は七代目小川治兵衛。南禅寺界隈別荘庭園群の多くが琵琶湖疏水の水を利用しているのと同様に、和輪庵の池の水も琵琶湖疏水分線から直接導水されています。この庭園はアカマツ、クロマツ、モミジを中心とした植栽に囲まれた池泉式回遊式庭園です。(『植彌加藤造園株式会社ホームページ』より)――

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 2
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 7
    見逃さないで...犬があなたを愛している「11のサイン…
  • 8
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 7
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 8
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中