利他の心に立つ稲盛和夫が活用する京都の日本庭園「和輪庵」
――悟りを開けば安心立命の境地に至り、そこが極楽浄土というわけです。その極楽浄土に渡る方法として、御釈迦様は『六波羅蜜(ろくはらみつ)』という修行をせよと説いておられます。
「布施」人を助ける行為、「持戒」戒律を守ること、「精進」一生懸命働くこと、「忍辱(にんにく)」耐え忍ぶこと、「禅定(ぜんじょう)」座禅を組む(心を静める)、その修行の最後に「智慧」に至るそうです。森羅万象を支配する宇宙の根本原理を知る、つまり悟りに至るわけです。この六波羅蜜を心がけ、一生をかけて人格を磨いていくことが大事だそうです。
なかでも「精進」努力を惜しまず一生懸命働くことが、基本的で重要です。「ものを成し遂げる」というのは、楽な方向ではなく、誠心誠意の努力、苦労を厭わないことが大切なのだそうです。
『京セラフィロソフィ』の中でも独特で、庭のテーマともなっている「利他主義」を紹介したいと思います。
――私たちの心には「自分だけがよければいい」と考える利己の心と、「自分を犠牲にしても他の人を助けよう」とする利他の心があります。利己の心で判断すると、自分のことしか考えていないので、誰の協力も得られません。自分中心ですから視野も狭くなり、間違った判断をしてしまいます。一方、利他の心で判断すると「人によかれ」という心ですから、まわりの人みんなが協力してくれます。また視野も広くなるので、正しい判断ができるのです。より良い仕事をしていくためには、自分だけのことを考えて判断するのではなく、まわりの人のことを考え、思いやりに満ちた「利他の心」に立って判断をすべきです。――
リーダーの資質
稲盛和夫は経営者の勉強会「盛和塾」の塾長を務め、たくさんの経営者に支持されています。中国でも稲盛和夫は大変人気で、勉強会の盛和塾では、3000〜4000人の人々が集まるそうです。
稲盛は、中国の経営者には、金持ちになりたいという欲望が原動力の利益追求型のきつい人間性の経営者が多いが、それだけではダメで、利他の心が大切だと説いています。多くの参加者が、稲盛に賛同していました。利他の心があると、会社は強くなり安定すると語っているのが印象的でした。
稲盛和夫は、人生を三期に分けて考えて、60歳頃からの第三期を、死ぬための準備期間として考えているそうです。その準備の一つが得度です。65歳で圓福寺で得度しましたが、その直前には、胃にガンが見つかって手術をしたそうです。
厳しく辛い托鉢の修行もしていたというのは驚きです。仏教的な思想では、魂は輪廻転生で、良きことを思い行うことで、魂を磨きあげるのが意義のある人生だそうです。