地方都市のスナックから「日本文明論」が生まれる理由
この「まごころ」は理性ですっぱりと物事を切ってしまうような「からごころ」と対置されるものです。宣長は若い頃、京都の"夜の街"に遊び、まごころをもって物のあはれを知る人情と人さばきのすべを身につけました。
これは現代における"スナック紳士"のあり方に通じるものがあります。今後は、このようなスナック紳士のありようを、より普遍的なものとして提示したいと考えています。すなわち、スナックという日本独特の文化を切り口にしたひとつの「文明論」なのです。
ちなみに余談ですが、スナックをはじめとする水商売の世界には2・8(ニッパチ)という言葉があり、2月と8月は閑散期です。忘年会、新年会が続いた後の2月、そして夏休みで人が出ていく8月も閉める店が多くなります。
しかし、このお盆休みで帰省する際には地元で開いているスナックを見つけ、調査(=飲む)してみてはどうでしょうか。地元に残った旧友に再会したり、自分の知らない故郷の姿が見えてくるなど、地域の情報が集積されているのがスナックという社交場だからです。
【参考記事】歴史の中の多様な「性」(1)
谷口功一(首都大学東京法学系教授)
1973年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員を経て現職。専門は法哲学。著書に『スナック研究序説――日本の夜の公共圏』(共著、白水社)『ショッピングモールの法哲学』(白水社)、『公共性の法哲学』(共著、ナカニシヤ出版)など。
『スナック研究序説――日本の夜の公共圏』
谷口功一、スナック研究会 編著
白水社
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