最新記事
大学

これまでと違う「アメリカ留学ブーム」が始まっている

高校生が東大を蹴って海外へ!? グローバル化を勝ち抜くために知っておきたい米大学の基礎知識(1)

2015年12月24日(木)21時40分

ハーバード大学 1636年設立、アイビーリーグの代表格で、全世界から志願者が願書を出し、その中から毎年1500人強が選ばれる難関校 Pgiam-iStockphoto.com

 文部科学省の調査によれば、日本から海外への留学者数は2004年をピークに毎年減っている。それでも今、新しいタイプのアメリカ留学ブームが起きていると、本誌ウェブコラム「プリンストン発 日本/アメリカ 新時代」でお馴染みの在米ジャーナリスト、冷泉彰彦氏は言う。一体どういうことなのか。

 これまで主流だった「語学留学」や「大学院留学」とは違う。グローバル化の潮流を背景に、日本の優秀な高校生が「アイビーリーグ」の8校をはじめとするアメリカの一流大学を志望する、全く新しい動きが起こっているのだ。実際、予備校が海外進学を目指す高校生向けのコースを設置したり、国内の一流大学と併願していた海外の大学を選ぶ学生が少数ながら出てきたりしているという。

 実は冷泉氏は、1997年以来、ニュージャージー州にあるプリンストン日本語学校高等部で進路指導にあたってきた。プリンストンやコロンビア、カーネギー・メロンなど多くの名門大学に高校生を送り出してきた経験をもとに、『アイビーリーグの入り方――アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)を上梓した冷泉氏。アメリカの高等教育の仕組みから、秘密のベールに包まれた「アイビーリーグ入試」の実態、厳選した名門大学30校のデータまでを1冊にまとめている。

 ここでは、本書の「Chapter 1 志望校をどうやって選ぶのか?」から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。そもそも「名門大学」とはどの大学を指すのだろうか。

<*下の画像をクリックするとAmazonのサイトに繋がります>


『アイビーリーグの入り方
 ――アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』
 冷泉彰彦 著
 CCCメディアハウス

◇ ◇ ◇

名門イコール「アイビーリーグ」ではない

 志望校選びについて考える前に、アメリカの大学に関してはどのような「カテゴリ分け」ができるかを整理しておきましょう。

 まず、トップクラスのいわゆる名門大学ですが、「格」として、その頂点に存在するのが「アイビーリーグ(Ivy League)」であると言われています。「リーグ」というのは「連盟」という意味であり、実際に連盟組織があってプリンストンに本部が設置されています。東海岸の歴史の古い伝統校による連盟として存在しており、参加校は8校です。

 この8校の中では、世界的にはハーバードが有名であり、これにプリンストン、イェール(Yale)が続いている、そんなイメージが出来上がっています。

 実際にこの3校は学部の部分は決して大規模校ではなく、それぞれ1学年ごとの学部学生は1500人前後であることから、確かに入学は狭き門であり、卒業証書も希少価値であるということは否定できません。

 ですが、この3校があらゆる専攻において秀でているかと言うと決してそんなことはありません。これに続く都市型のアイビー校であるコロンビア(Columbia)や、ペンシルベニア(通称「U ペン」University of Pennsylvania)、さらにはブラウン(Brown)、やや規模が大きい一方で学内の競争が激しいコーネル(Cornell)、そして自然に抱かれた環境にあるダートマス・カレッジ(Dartmouth College)と、加盟校の8校はそれぞれに強みを持っており、強烈なプライドと卒業生組織の結束力を誇っているのです。

 このアイビー連盟校に加えて、西海岸のスタンフォード、ハーバードに隣接する工科大学のMIT という2校も、プライドの高さと卒業生の結束力ということでは、アイビーと同格と考えられています。

 事実上、こうしたトップグループと同格の大学は他にもあります。

 ジョンズ・ホプキンス、ジョージタウン、ボストン・カレッジ、ライス(Rice)、デューク、カーネギー・メロン、ワシウ、シカゴ、ノースウェスタン(Northwestern)といった私学名門の各校を、とりあえずそのグループだと言っていいでしょう。

 このグループは、専攻によっては「全米でナンバーワン」の分野を持っていると同時に、学部・大学院全体の教育レベル、学生のレベルも十分にトップ級だと言えます。

 さらに、都市に密着した環境で、それぞれに独自の校風を持っているニューヨーク大学(通称「NYU」New York University)、マイアミ大学(University of Miami)、ボストン大学(通称「BU」Boston University)、南カリフォルニア大学(通称「USC」University of Southern California)なども「私学の雄」的な存在であり、全国的な人気と評価があります。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中