ヒーローたちが泣いている
グラフィックノベル『ウォッチメン』の実写映画は、原作の正確な再現でコアなファンには喜ばれるだろうが…
ファンは大喜び ザック・スナイダー監督は原作のグラフィックノベル『ウォッチメン』を充実に映像化
勇気を奮って告白する私の潔い態度を誰かほめてくれないだろうか。
実は10年前、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』が公開されたとき、私は大傑作だと思った。見終わった後に友人とバーで映画のシーンをあれこれ思い出しながら、世間はなぜこの作品の素晴らしさに気づかないのかと嘆いたものだ。
『スター・ウォーズ』を見て育った世代には、作品を無条件で受け入れたい気持ちがある。だからアナキン・スカイウォーカーを演じる子役や新しいキャラクターのジャー・ジャー・ビンクスについても、これでいいのだと自分に言い聞かせた。
映画公開から数週間後、同僚はジョージ・ルーカスが書いたお粗末な劇中のせりふ(「耐えろ、私の青い友達よ」など)で私をからかったり、アナキン役の男の子を「スカイウォーカー人形」と呼んだりするようになった。
大半の人にとっては『エピソード1』が失敗作だということなど一目瞭然だったらしい。だが駄作だと私が気づいたのは数カ月後のこと。これも愛がなせる業だ。
『スター・ウォーズ』のファンは新3部作の登場まで長い間待たされた。だがアラン・ムーア原作、デーブ・ギボンズ作画のグラフィックノベル『ウォッチメン』のファンに比べればましだ。86◯87年に12巻が出版されたこのコミックスの実写映画は、今年3月6日にようやく全米公開された。
監督は『300〈スリーハンドレッド〉』のザック・スナイダー。『ウォッチメン』を初めて読んだのは大学生のときで、「自分のために作られた音楽」と出合ったような気がしたという。
『ウォッチメン』の時代背景は米ソ冷戦期の85年だが、舞台は「スーパーヒーロー」たちが実在するもう一つの世界だ。ニクソン政権は3期目に入り、アメリカはベトナム戦争に勝利。核戦争の脅威が差し迫っている。