最新記事

インタビュー

「みんな承認欲求をこじらせている。それを意識して選択しているか?」Tehuが語るネットと人生

2020年10月29日(木)16時25分
朴順梨(ライター)

tehubook20201030-3.jpg

『「バズりたい」をやめてみた。』より(写真:柴田ひろあき)

「なぜ自分がそれをしているのか」を振り返ってほしい

――大炎上の際たるものと言えば2014年、18歳のときの「小4なりすまし事件」だと思います。あれは結果的に大バッシングされて今は鎮火しました。しかし、ネット上では今日も誰かに対する誹謗中傷はやむことなく続いていて、それに対して「嫌ならネットを見なければいい」という声もあります。

(※編集部注:「小4なりすまし事件」2014年11月、Tehuと大学の友人が小学4年生になりすまして衆議院解散に対する意見サイト『どうして解散するんですか?』を立ち上げ、そのクオリティの高さなどから即身バレしてしまった事件)

誹謗中傷に対して「ネットを見なければいい」とは確かによく言われますし、僕も今はほとんど見ていません。でも「見なけりゃいい」って言いますが、普通は見ますよね(笑)。

そもそも世に発信しているというのは承認欲求があるからで、承認欲求を満たすことが目的だったら、当然リプライは見るわけですよ。承認欲求を満たすためには表現するだけじゃなくて、反応がないと駄目なわけで。

でも「そこまでして人の悪口を言いたいのか」というのと同時に、「そこまでしてまで承認されたいのか」という問題もあると思うんです。

最近は誹謗中傷をした相手を訴える動きもあります。当事者にとっては、抑止力にはなります。でも、結局、同じ問題はくり返される。罰しても、見せしめにしても、世の中から悪いことはなくならない、ということは人類の歴史が証明しているじゃないですか。だから、僕らが本当に向き合わなきゃならない問題って何だっけ? という根本を忘れてはいけないと思います。

もちろん、叩く人も叩かれる人も、自分の内面に向き合うことで、なぜそういうことが起こったのか自分の中に原因を見つけることだって必要です。でも、目の前の問題だけに取り組もうとするからいつまで経っても変わらない。そこで、一歩引いて自分を客観視してみると、結果として気付けることもあるのではないかと思います。

――なぜ承認欲求をこじらせてしまった挙句、叩いたり叩かれたりの不毛なやりとりが生まれるんでしょうね?

今も僕もこじらせてますし、皆こじらせてると思うんですけど、その言葉自体にあるネガティブなイメージを僕は持っていない。それは一つの選択で、芸能人とかがそうですが、選択し続けることでしかできない仕事もあると思います。

人に注目されて評価されることが価値に直結するわけですが、それを意識して選択しているかどうかが大事なんです。ずっと続けていると自分はただ注目されたいのか、それとも自分自身の意思でそれをやっているのかが分からなくなってくるんです。

自分の本音すら分からないのに話を進めてしまうから、極めて危険な方向に行きます。だから、よかったら一回自分を俯瞰して「なぜ自分がそれをしているのか」を振り返ってほしいです。その結果、控えめな生活に戻るとしても、そのほうが本人にとっての幸せにつながるかもしれない。

そういったことを各々の人にやってほしいという思いから、僕は知人のインフルエンサーにこの本を送っています(笑)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中