最新記事

インタビュー

「みんな承認欲求をこじらせている。それを意識して選択しているか?」Tehuが語るネットと人生

2020年10月29日(木)16時25分
朴順梨(ライター)

tehubook20201030-2.jpg

『「バズりたい」をやめてみた。』より(写真:柴田ひろあき)

――Tehuさんは、自身が10代で注目を集めたのはネットの力が大きかったと思いますか?

ネットそのものもそうですが、ちょうど中学生だった2010年頃から、匿名から実名になる流れがあったのが大きいと思います。この頃からTwitterやFacebookを使い始める人が増えて、各業界の中から注目される人が現れ始めましたよね。

同時に、フォロワー数がアカウントの価値を明確にするようになりました。今でこそ「この人、フォロワーは何人だろう」と当たり前のように見ますが、2010年以前にはあり得ない考え方だったと思っています。そしてフォローという概念により、僕自身が自分の承認欲求を熟成していったんだと思います。

自分の承認欲求がどう育っていったかは本に書きましたが、その承認欲求が開花するタイミングとデジタルネイティブがもてはやされた時期とかぶってるんです。後の体験から考えればタイミングが悪かったのかもしれないけれど、いま振り返るとそれも含めて稀有な経験をさせていただけたし、そういう時代背景があってこその自分だったと思うんです。

僕のことを考えるなんて時間と思考の無駄

――この本では自分の生い立ちから始まり、Tehuという「炎上ゴジラ」を経て、バズらない「さとる」になるまでを書いています。過去の恥ずかしい自分を振り返って書き残す作業は、結構勇気がいったのでは?

3年前の僕だったら、できなかったと思います。ただこれは2年間、誰かと共有するためではなく、自分のこれからのために清算しようと考え続けてきたことだったので、それを誰かに見せること自体には心理的なハードルを感じませんでした。

だって、検索すれば僕の過去の恥ずかしい発言なんていっぱい見つかるから。いまだに掘り返されたりするんですよ。それに比べたら自分の過去を自分の言葉で語るなんて、全然恥ずかしくない。

本にも書きましたが、僕ではない人が街中で暴れた映像を、僕がやったようにいまだに語られることもある。そんなのに比べたら、自分で何を言おうが全然マシかなと。

この本の締めくくりに、「己の承認欲求どころか、他人の承認欲求に踊る阿呆になるな」ってことを書いたんですけれど、僕がそこにいないにもかかわらず、今もなお僕の幻影を探し求めている人はいます。いい幻影でないのが残念なんですが、仕方ありません。いまだに僕にメンションを振る人もいれば、「あいつ消えたよね」と、笑う人もインターネットの世界にはいます。

でも僕のことを考えるなんて時間と思考の無駄だと思うんです。世の中には知らないことや面白いことがたくさんあるということを、この本と出合った人に伝えられるのであれば、それは恥ずかしさを越えて自分がやるべきことだと思います。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中