最新記事

コロナストレス 長期化への処方箋

第2波でコロナ鬱、コロナ疲れに変化、日本独自のストレスも

2020年8月22日(土)12時45分
西多昌規(早稲田大学准教授、精神科医)

KIM KYUNG HOON-REUTERS

<会社員、大学生、高校生、医療従事者......。長期化が現実になり、自粛と分断と日本型社会の中、メンタルヘルスの問題が深刻化している。バーンアウト(燃え尽き)を防ぐにはどうすればいいのか、精神科医がアドバイスする。本誌「コロナストレス 長期化の処方箋」特集より>

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第2波到来が、既に現実のものとなってきている。増加する一方の患者数に加え、はっきりしない政府・自治体の政策に、不安を感じている人がほとんどだろう。
20200825issue_cover200.jpg
4月7日に政府より緊急事態宣言が発令される前後から、自粛に伴う精神的ストレスを意味する「コロナ鬱」「コロナ疲れ」という用語をよく目にするようになった。

ただ、4~5月の緊急事態宣言のときに比べて、第2波が襲来し長期化が現実のものとなった現在では、「コロナ鬱」「コロナ疲れ」の性質が変化してきているように思える。諸外国とは異なる、日本ならではのCOVID-19と向き合う特徴も、徐々にはっきりしてきた。本稿では、長期化するCOVID-19に伴い初期の頃とは変化してきたメンタルヘルス問題を、私のクリニックでの診療や大学での学生相談内容に基づいて、日本特有の特徴や事情を絡めて考えてみたい。

メディアで毎日のように報道される患者数は、4~5月の緊急事態宣言のときよりも多い。不安を感じる一方で、COVID-19への油断、不安に対する慣れ、COVID-19以前の状態に戻りたいという欲求が生じていないと言えば嘘になるだろう。また、緊急事態宣言ではあれだけ我慢したのに、また感染拡大かという怒り、やるせなさは、理解できる心情である。

仕事に関しては、会社員ならばリモートワークのストレスがあるだろう。一橋大学イノベーション研究センターが5月に発表した「新型コロナウイルス感染症への組織対応に関する緊急調査」でも、約60%の企業が、「仕事上のストレスが増えた」と回答している。会社・プライベートの境界線がなくなったための新たな問題が生じている。平日休日関係なく一日中パソコンの前で終わりのない作業を強いられ抑鬱的となる、リモートワークでの「過重負荷」の症例も経験した。

オンラインでは、内容によっては細やかな作業のやり取りがどうしてもうまくいかないことも多い。オンラインは便利に見えるが、オフィスで直接質問や相談する機会がないことで、仕事の遅延や不備をきたし、精神的負荷をかえって強くしている場合もあるのではないだろうか。

会社経営や自営業、特にレジャーや外食関連に携わる人は、破壊的な収益減少を経験し、今後も厳しい対応を迫られることは間違いない。行政の財政援助も枯渇してきている。アメリカではCOVID-19による経済死を「絶望の死」とし、15万人に上るとする推計もある。経済不況は、2019年には2万人を切るまでに減少した自殺者数を、再度増加させる要因となりかねない。

【関連記事】ズーム疲れ、なぜ? 脳に負荷、面接やセミナーにも悪影響

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

製造業PMI11月は49.0に低下、サービス業は2

ワールド

シンガポールGDP、第3四半期は前年比5.4%増に

ビジネス

中国百度、7─9月期の売上高3%減 広告収入振るわ

ワールド

ロシア発射ミサイルは新型中距離弾道弾、初の実戦使用
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中