最新記事
インタビュー

起業家けんすうが10年以上勧めてきた1冊の本

2018年11月26日(月)16時00分
今井順梨

その一方で、ただ「残っていく」仕事ではなく、これから求められていく仕事があるなら、それは何なのだろう。


最近よく言われているのが「旗を立てる仕事」というものです。「こういう世界を作るんだ」「こういうものを作るんだ」っていう旗を立てるのが、今求められているものではないか。

それを目に見える形にしているのが、キングコングの西野亮廣さんだと思うんです。西野さんは自身が描いた『えんとつ町のプペル』(幻冬舎)と同じ世界観の美術館を作ると決めて土地を買い、クラウドファンディングのプラットフォームを立ち上げ、クラウドファンディングを始めました(2018年10月下旬現在、約4400万円が集まっている)。

美術館という明確な旗を立てたから資金が集まるわけだし、建設予定地に入って建設過程を見ることができるという、一緒に美術館を作っていくリターンも支持されている。アイデアって「どうやるの?」のHowで捉えられがちですが、最近はこのような「なぜそれをやりたいのか」の、Whyのほうが大事なんじゃないかと思ってます。

けんすうさんは「自分でやりたいわけではないけれど」と前置きしながらも、VR(仮想現実)を活用したコミュニケーションに今、興味があるという。


この数年でVRが一般に普及していくと思っています。そうなるとVRを介して、多数の人格が生まれると思うんです。SNSのサブアカ(サブアカウント)を想像すると分かりやすいんですが、日本では1人がアカウントを5、6個持っていて、それぞれキャラや発言を使い分けていますよね。でもアメリカでは1人1個で、使い分けはしていない。日本をはじめ東洋人の傾向なのかもしれませんが、これって面白いなと思っていて。

自分の意見を他者に語らせるというか、他の人格に乗り移って発言するっていうのが東洋型のコミュニケーションだと思うんです。だからVRの世界では、たくさんの人格を皆でシェアするというか、誰かに乗り移る形のコミュニケーションが生まれていくのではないか。そうなっていくと自分と他人の境目がなくなって、めちゃくちゃ楽しくなりそうだなって。でもその「バーチャル人格のシェア」によってどんなビジネスが生まれるかは、今は全然分からないですけど(笑)。

5、6回チャレンジし続ければ大抵が当たる

多くの人が、働くこと=お金を稼ぐことであり、それは決して好きなことでも楽でもないと考えている。どうしたら好きなことをしながら、苦しむことなくお金を稼げるようになるのだろうか。


起業して成功する確率って日本でもアメリカでも15%程度と言われているので、これはもう運だけだと思います。新規事業が5回か6回に1回ぐらいしか当たらないということは、5、6回チャレンジしてようやく当たるかどうか。周りの起業家を見ていてそれは実感します。逆に失敗する起業家って、1回のチャレンジでうまくいかないとそこでやめてしまうんです。

でも人生って紙に書かれた迷路と同じで、一筆書きのように一気にゴールに辿り着くのは至難の業です。迷路が行き止まりだと気づいたら、戻って違う道を探せばいいのと同じで、人生もぶつかったときに失敗だと思ってチャレンジをやめたら、永遠にゴールできない。戻ることには実害はないのに、行き止まりを障害だと思って迷路をやめてしまう人が多いので、それはもったいないなと思うんです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米関税の影響注視、基調物価の見通し実現なら緩和度合

ワールド

パキスタン、貿易停止など対抗策 観光客襲撃巡るイン

ビジネス

G7は結束維持、米関税巡る緊張も=議長国カナダ財務

ビジネス

関税対策パッケージ決定、中小企業の多角化など支援=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 5
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 9
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 10
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中