最新記事

モノづくり

イノベーション流行りの日本が、順位を4位から25位に落とした理由

2018年6月4日(月)17時59分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

recep-bg-iStock.

<国を上げて取り組んでいるのに、イノベーションに関する国際競争力ランキングで順位を下げ続ける日本。ロジカル・シンキングやオープン・イノベーションといった欧米型のアプローチに頼り過ぎているのが原因では?>

「イノベーション」は、今やビジネスの世界に限らず一般社会にも広がり、この言葉を見たり聞いたりしない日はないと言っていい。と同時に、「もう聞き飽きた」「何でもかんでもイノベーションって言うなよ」と思う人も増えていることだろう。そんな声に応えるかのように、「『イノベーション』という言葉にウンザリな人へ」という見出しから始まる本が刊行された。

自社製品・サービスの開発による新規事業の立ち上げ(つまり、イノベーションだ)を支援する株式会社enmono(エンモノ)代表の三木康司氏による『「禅的」対話で社員の意識を変えた トゥルー・イノベーション』(CCCメディアハウス)だ。

日本のイノベーションはうまくいっていない

「イノベーション(innovation)」は「技術革新」と訳されることが多いが、この言葉を提案した経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは当初、「新結合」と定義していた。つまり、「想定外の分野をつなぎ合わせることで、従来とはまったく異なる価値を生み出すこと」だ。

著者の三木氏は、イノベーションという言葉が日本ではまだ認知されていなかった時期に、大学院の博士課程でイノベーションを研究していた人物。その後、ベンチャー企業の立ち上げに参画するが、紆余曲折を経て自ら起業し、今では企業がイノベーションを生み出す手助けをしている。

そんな三木氏は2016年頃から、名刺交換をした相手の部署名や肩書きに「イノベーション」という言葉が増えたという実感を持っているそうだ。同じように感じている人は多いかもしれない。製造業を中心に強かった日本企業がグローバル競争に苦しむなか、日本は国を挙げてイノベーションに取り組んでいる現状がある。

だが残念なことに、イノベーションに関する国際競争力を比較したデータによれば、日本は毎年確実に順位を下げていて、2007年には4位だったのが2012年には25位にまで落ちている(本書で紹介されている「情報通信白書2013年度版」の資料より)。

実際、大企業がこぞって「○○イノベーション推進事業部」といった部署を立ち上げているのであれば、もうそろそろ新規ビジネスが次々に誕生し、新たな製品・サービスが市場に投入されてもよさそうなはずだが、そうした波はあまり感じられない。

要するに、日本のイノベーションはうまくいっていないのではないか。そして、イノベーションがうまくいかないのは、ロジカル・シンキングやオープン・イノベーションといった欧米型のアプローチに安易に頼り過ぎていることが原因なのではないか――というのが三木氏の指摘である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中