イノベーション流行りの日本が、順位を4位から25位に落とした理由
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<国を上げて取り組んでいるのに、イノベーションに関する国際競争力ランキングで順位を下げ続ける日本。ロジカル・シンキングやオープン・イノベーションといった欧米型のアプローチに頼り過ぎているのが原因では?>
「イノベーション」は、今やビジネスの世界に限らず一般社会にも広がり、この言葉を見たり聞いたりしない日はないと言っていい。と同時に、「もう聞き飽きた」「何でもかんでもイノベーションって言うなよ」と思う人も増えていることだろう。そんな声に応えるかのように、「『イノベーション』という言葉にウンザリな人へ」という見出しから始まる本が刊行された。
自社製品・サービスの開発による新規事業の立ち上げ(つまり、イノベーションだ)を支援する株式会社enmono(エンモノ)代表の三木康司氏による『「禅的」対話で社員の意識を変えた トゥルー・イノベーション』(CCCメディアハウス)だ。
日本のイノベーションはうまくいっていない
「イノベーション(innovation)」は「技術革新」と訳されることが多いが、この言葉を提案した経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは当初、「新結合」と定義していた。つまり、「想定外の分野をつなぎ合わせることで、従来とはまったく異なる価値を生み出すこと」だ。
著者の三木氏は、イノベーションという言葉が日本ではまだ認知されていなかった時期に、大学院の博士課程でイノベーションを研究していた人物。その後、ベンチャー企業の立ち上げに参画するが、紆余曲折を経て自ら起業し、今では企業がイノベーションを生み出す手助けをしている。
そんな三木氏は2016年頃から、名刺交換をした相手の部署名や肩書きに「イノベーション」という言葉が増えたという実感を持っているそうだ。同じように感じている人は多いかもしれない。製造業を中心に強かった日本企業がグローバル競争に苦しむなか、日本は国を挙げてイノベーションに取り組んでいる現状がある。
だが残念なことに、イノベーションに関する国際競争力を比較したデータによれば、日本は毎年確実に順位を下げていて、2007年には4位だったのが2012年には25位にまで落ちている(本書で紹介されている「情報通信白書2013年度版」の資料より)。
実際、大企業がこぞって「○○イノベーション推進事業部」といった部署を立ち上げているのであれば、もうそろそろ新規ビジネスが次々に誕生し、新たな製品・サービスが市場に投入されてもよさそうなはずだが、そうした波はあまり感じられない。
要するに、日本のイノベーションはうまくいっていないのではないか。そして、イノベーションがうまくいかないのは、ロジカル・シンキングやオープン・イノベーションといった欧米型のアプローチに安易に頼り過ぎていることが原因なのではないか――というのが三木氏の指摘である。