最新記事

リーダーシップ

エディー・ジョーンズに学ぶ「気配り」のリーダーシップ

2018年1月22日(月)17時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

2012~2015年にラグビー日本代表を率いたオーストラリア出身の名将エディー・ジョーンズ(2015年撮影)。現在はイングランド代表監督を務める Darren Staples- Action Images via Reuters

<これからの時代に求められるリーダーシップとは何か。一見すると強力なトップダウン型に思えるエディー・ジョーンズの姿勢にも、「フォロワーシップ」のアプローチが取り入れられている>

ラグビーの名将エディー・ジョーンズといえば、強い言葉で選手を指示し、怒鳴りつけるトップダウン型リーダーのイメージ? うわべだけを見て真似をするべきではないと、ジョーンズ氏と親交のある日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターの中竹竜二氏は言う。

指導者未経験のまま早稲田大学ラグビー蹴球部の監督に就任し、「日本一オーラのない監督」と言われながら全国大学選手権2連覇を達成。現在、企業のリーダー育成に特化したプログラムを提供するチームボックスの代表取締役も務める中竹氏は、新しいリーダーシップの形である「フォロワーシップ」を提唱している。

中竹氏によれば、「フォロワーシップ」とは「組織を構成する一人ひとりが自ら考え、行動し、成長しながら組織に貢献するための機会を提供し、環境を整える努力をすること」。

経済が停滞し、情報拡散スピードが速まるなど産業を取り巻く環境が変化している近年、カリスマ的リーダーシップの限界が露呈し、「自ら考える部下」が求められるようになっている。「フォロワーシップ」の時代が到来しているのだ。

その「フォロワーシップ」は、どのようにすれば実践できるのか。ここでは中竹氏の新刊『【新版】リーダーシップからフォロワーシップへ――カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。第3回は「終章 これからの時代のリーダーとは」より。

第1回:自ら考える部下の育て方は「日本一オーラのない監督」が知っていた
第2回:期待に応えず、他人に期待しないほうがうまくいく理由

◇ ◇ ◇

優れたコーチの共通項

本章では、私が日本ラグビーフットボール協会のコーチングディレクターという役職を務める中で見えてきた、中長期的に強いチームを育てることができる優れたコーチの共通点を述べていく。

「これから求められるフォロワーシップ型リーダーの行動モデル」として、参考にしていただければと思う。

勝利よりベストを尽くすことを評価する

優れたコーチほど、目の前の勝利だけにこだわらない。

「勝て、勝て」とすぐに結果を求めるのではなく、その選手にとってのベストを尽くすことを評価軸に置く。

選手が成長するために何が課題なのか。そして、その課題を乗り越えるために、今日の試合でなすべきことは何なのか。

問いかけながら、選手自らが考えるように促す。

選手が自信を失っていたり、不安を抱いていたりするならば、すかさず「期待」の言葉で奮い立たせる。

「お前は大丈夫だ。このくらいの目標は十分に挑めるぞ。それほどの実力はすでに備えている」

そんな言葉で励ましながら、本人が自分自身にかけている期待以上のポテンシャルを持っていることを気づかせるのが非常にうまい。

優れたコーチほど、自らの役割が「選手が自分の力を信じてベストを発揮するためのサポーターである」ことを強く意識し、日々の行動に活かしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米自動車販売、第1四半期は増加 トランプ関税控えS

ワールド

イスラエル「ガザの食料十分」、国連反論 物資不足で

ビジネス

トランプ氏、TikTok巡る最終案を2日に検討=米

ワールド

ロシアが和平交渉停滞なら制裁へ、米上院超党派議員が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中