最新記事
ビジネス

ANAがトヨタの「カイゼン」を導入...他社が失敗するなか、非製造業なのに成果を出せた理由

2025年3月25日(火)16時55分
川原洋一(ANAビジネスソリューション講師)
ANAの旅客機

Vytautas Kielaitis-shutterstock

<トヨタの「カイゼン」は有名だが、導入に失敗する企業は少なくない。航空運送を事業とするANAはなぜ成功できたのか。カギは、成果を社員に「還元」することだった>

*この記事は、トヨタが生み出した生産方式「カイゼン」を非製造業でも導入できるものに変え、大きな成果を上げたANAの秘密を解き明かす『ANAのカイゼン』(川原洋一著、かんき出版)から、一部を再編集したものです(全3回の第1回)。

※抜粋再編集の第2回:職場の「ムダ」は2つの「ム」から生まれる...業務の生産性を上げるには何が必要?
※抜粋再編集の第3回:なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分から15分にまで短縮できたのか

◇ ◇ ◇

カイゼンを定着させるために必要なもの

ANAグループオペレーション部門は、2016年にカイゼンを導入してから、多くの成果を得てきました。

ですが、実はANAの中にも「カイゼンは製造業のための生産方式である」というイメージが根強くありました。「非製造業がカイゼンを導入する」というハードルの高さは、実際に多くの非製造業の企業が感じているようです。

私たちがANA流カイゼンについてお話しすると、決まって、「なぜ、そんなにうまくいっているのですか?」と驚かれます。「うちもカイゼンを入れたけど、うまくいかなかった」という企業が非常に多いのです。

カイゼンの導入に失敗したという方に話を伺ってみると、陥りやすい共通の落とし穴があることがわかってきました。それは、

・5Sを入れただけで終わってしまう
・従業員が積極的にカイゼン活動に取り組んでくれない
・非製造業なので、カイゼンをどのように実行すればいいかわからない

といったものです。

さらに、カイゼンの導入はしたものの定着させることができなかったという企業は、2年程度で頓挫することが多いということも見えてきました。導入した初年度は社員がなんとかカイゼン活動をしてくれるものの、翌年になるとその勢いは失速してしまうようです。

カイゼンに無限の可能性を感じていた私たちは、カイゼンをせっかく入れるなら、「絶対に失敗したくない」「絶対に定着させたい」と考えました。

組織が最も守るべきものを明確にする

カイゼンのゴールは、「高い品質」と「高い生産性」を実現することです。

トヨタ生産方式のカイゼンは、製造ラインのムダを取り除き不良品の生産を極力減らすことによって、商品における高い品質と高い生産性を実現します。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ和平案、米国との合意は容易ではない=ロシ

ビジネス

焦点:ルイ・ヴィトン、テキサスの生産苦戦 米拠点拡

ワールド

自民が対米交渉で会合、赤沢再生相「国益や効果考え抜

ワールド

赤沢再生相が16日─18日に訪米、財務長官・通商代
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトランプ関税ではなく、習近平の「失策」
  • 3
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 6
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    シャーロット王女と「親友」の絶妙な距離感が話題に.…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中