ANAがトヨタの「カイゼン」を導入...他社が失敗するなか、非製造業なのに成果を出せた理由
しかし非製造業の場合、「製品を作る」というゴールはありません。ですから、トヨタ生産方式でよく使われているJITやニンベンのついた自働化、タクトタイムの設定などの手法をそのまま取り入れることは難しく、自社により適したカイゼンを模索する必要があります。
定型業務が少ないので、タクトタイムの設定で効果を出すことは難しいのです。実際にANAも非製造業であることを前提として、自社の風土や文化に合ったかたちでカイゼンを導入していきました。
「カイゼンって製造業の手法ですよね?」
「なぜうちにカイゼンを導入するのですか?」
こうした社員の戸惑いも想定して、カイゼンを自分たちの仕事場にうまく持ってくるにはどうすればいいのか、カイゼンをどのように進めていくのかを考えていきました。
ANAグループの中心事業は航空運送事業です。お客様を飛行機にご搭乗いただき、安全に目的地まで送り届けること。これがANAグループの最も重視するべきミッションです。飛行機を利用してくださるお客様の安全は、絶対に守らなければなりません。
ANAには数多くのグループ会社や子会社があります。
また、社内にもネットワーク部や経営戦略室、調達部、人事部や広報部など、さまざまな間接部署があります。
それぞれ手がけている仕事や求められる成果は異なりますが、すべての部署の仕事は安全に航空機を運航することにつながっています。
そこでカイゼンも、究極を言えば「もっと安全にお客様を目的地まで運ぶため」に導入するべきだと考えました。組織が最も守るべきものが明確に示されていたことで、カイゼン導入後も軌道修正しながら、社内にカイゼンを定着させることができたと考えています。