子会社化は「論外」、ホンダ案に日産衝撃...危機感の溝埋まらず
ホンダは、当初計画していた持ち株会社方式での統合では経営のスピードが上がらないと判断。日産が福岡県北九州市で電池工場の新設計画を発表し、同拠点の生産能力を削減しない方針を示した翌1月23日、日産に子会社化案を打診した。しかし、内田社長が「どちらが上、下ではなく」と昨年12月の会見で述べた通り、対等の関係で統合を想定していた日産社内では突然の提案に反発が広がった。
「日産にホンダの子会社になれと提案するなど到底受け入れられない。全く論外だ」と日産関係者は語り、「日本最古の自動車メーカー(の1つ)が、ホンダの完全子会社になるなんて冗談にしか聞こえない」と憤った。
当初の持ち株会社方式による統合の協議に戻せないかとの意見もあったが、日産が2月5日に開いた取締役会では、子会社化案への反対が強く、交渉自体を白紙に戻す方針を確認した。翌6日に内田社長がホンダ本社を訪れ、取締役会の総意をホンダの三部敏宏社長に伝えた。
ロイターはホンダと日産に交渉過程についてコメントを求めた。ホンダ広報は「当社が発表したものではない」とし、日産広報は「憶測に対してはコメントしない」とした。ルノーは、協議の詳細は知らされていないとする一方、自社の利益を「断固として守る」とコメントした。
4つの拠点
ホンダと日産が経営統合協議入りを発表したのは、昨年12月23日。持ち株会社の下に両社が入る形で統合の検討を開始し、今年6月には最終合意を目指す予定だった。日産の内田社長とともに会見したホンダの三部社長は「自立した2社でなければ経営統合の成就はない」と明言、日産の再生計画の実行が「統合の絶対条件」と強調した。
日産は昨年11月の決算会見で、人員9000人と生産能力2割の削減を表明したが、2カ月以上が経った1月22日、北九州市内に電気自動車(EV)向け電池工場の建設計画を発表した。地元首長も参加した式典で会見した坂本秀行副社長は、九州地域で生産能力を削減することはないと明言した。
九州だけでなく、米国のスマーナ、メキシコのアグアスカリエンテス、英国のサンダーランドの工場は「EV戦略を進める上で譲れない。閉鎖するような計画にはなっていない」と関係者は話す。