【読解力を高める】オーディオブックの意外な効用...出版翻訳家が「聴く読書」を勧める理由
音声は文字より情報量が多い
アメリカはAudible の市場が大きく、私が訳す本のほとんどはAudible 版も出ています。アメリカのAudible は著者本人が読むこともよくあります。自伝が出ているパリス・ヒルトンも、ミシェル・オバマも自分で読んでいます。
Audible で聴くと感情の起伏がよくわかります。以前、寝ながら原書のAudible を聴いていて、飛び起きたことがありました。「いま、笑ってた!」「そうか、笑うシーンなんだ」と、声の抑揚でわかったのです。
あわてて訳文と原文のファイルを立ち上げて、その箇所を確認しました。最初はなんとなく聴くようになった Audible ですが、そんな経験を経て、本格的に使うようになっていきました。武器がひとつ増えたような気分です。
音声は文字よりも情報量が多いと私は感じています。しっかり訳しているつもりでも、文字だけだと行間や感情が深く読み取れていないことがあります。
日本語の文章でも同じですよね。著者がここで笑ったのは、嬉しいからなのか、皮肉なのか、曖昧でよくわからないといったことはよくあります。読解力をいくら駆使しても、わからないからこそ読書はおもしろいのですが、訳すときには悩ましい問題です。
日々の訓練で英語を聴く速度が上がる
音声で聴くことで、そうしたうっかりを防ぐことができます。英米圏の本は分厚いことが多いので、Audible も18時間あったりします。そのまま流していたのでは間に合わないから倍速で聴いています。
最近は倍速で聴く技も磨きがかかってきて、2・5倍速くらいまでは聴けるようになりました。本1冊でも2、3日でチェックが完了します。人に言うと驚かれます。でも、ちゃんと耳に流れてくるのです。
人間は繰り返し努力をすれば、できるようになる。繰り返すことによって誰もがエキスパートになれる。これはとても希望のあることです。
村井理子(むらい・りこ)
翻訳家/エッセイスト 1970年静岡県生まれ。滋賀県在住。ブッシュ大統領の追っかけブログが評判を呼び、翻訳家になる。現在はエッセイストとしても活躍。
著書に『兄の終い』 『全員悪人』 『いらねえけどありがとう』(CCCメディアハウス)、『家族』『はやく一人になりたい!』(亜紀書房)、『義父母の介護』『村井さんちの生活』(新潮社)、『ある翻訳家の取り憑かれた日常』(大和書房)、『実母と義母』(集英社)、『ブッシュ妄言録』(二見文庫)、他。訳書に『ゼロからトースターを作ってみた結果』『「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室』(新潮文庫)、『黄金州の殺人鬼』『ラストコールの殺人鬼』(亜紀書房)、『エデュケーション』(早川書房)、『射精責任』(太田出版)、『未解決殺人クラブ』(大和書房)他。
『エブリシング・ワークス・アウト 訳して、書いて、楽しんで』
村井理子[著]
CCCメディアハウス[刊]
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