最新記事
EV

EU、中国製EVへの追加関税を正式承認...代替案巡る協議は継続

2024年10月30日(水)14時40分
中国EV大手の比亜迪(BYD)の新車

10月29日、欧州連合(EU)は、中国製の電気自動車(EV)に対する関税を最大45.3%まで引き上げることを決定した。写真は中国EV大手の比亜迪(BYD)の新車。24日、ベルギーのゼーブルッヘで撮影(2024年 ロイター/Yves Herman)

欧州連合(EU)は、域内諸国で意見が分かれた反補助金調査を終了し、中国製の電気自動車(EV)に対する関税を最大45.3%まで引き上げることを決定した。

従来の10%に加えて7.8─35.3%の関税を徴収する。追加関税は29日に正式承認され、EU官報に掲載された。30日に発効する。

EUの欧州委員会は、優遇融資や補助金、市場価格を下回るバッテリーなどに対抗するため関税が必要だと主張している。


 

中国のEV生産能力は年間300万台で、EU市場の2倍に相当するという。米国とカナダの関税が100%であることを踏まえると、中国製EVは欧州向けが多い。

中国商務省は30日の声明で「中国はこの決定に賛同せず、受け入れない」と表明。その上で「EU側が価格のコミットメントについて中国と交渉を継続する意向を示唆したことに留意する」とし、「貿易摩擦の激化を回避するため、できるだけ早期に双方に受け入れ可能な解決策」を見いだすことを期待すると述べた。

在EUの中国商工会議所は「保護主義的で恣意的」なEUの措置に深く失望したと表明。関税に代わる措置を模索する協議に実質的な進展がないことにも失望感を示した。

中国はこれまでにEUの関税が保護主義的で、EUと中国の関係や自動車のサプライチェーン(供給網)に影響を与えると指摘し、EU産のブランデーや乳製品、豚肉を対象に独自調査を開始するなど報復とみられる動きを取っている。

今月4日に行われた関税に関する採決では加盟国のうち10カ国が賛成、5カ国が反対、12カ国が棄権した。経済規模が域内最大で自動車の主要生産国であるドイツは反対した。

ドイツ経済省は29日、現在進行中のEUと中国の交渉を支持するとし、EUの産業を保護しながら貿易摩擦緩和に向けた外交的な解決を望むと述べた。

欧州委は関税の代替案を見つけるため、中国と8回にわたって技術的な交渉を行っており、関税導入後も協議継続は可能だとしている。

双方は輸入車に最低価格を設ける案などを検討しており、さらなる交渉を行うことで合意した。ただ、欧州委は「大きな隔たりが残っている」としている。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241217issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月17日号(12月10日発売)は「韓国 戒厳令の夜」特集。世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


SDGs
「ステハジ」が描く脱プラ未来...マイボトルでギネス記録、給水が新たな選択肢に
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均2カ月ぶり4万円、日米ハト派織り込みが押し

ワールド

EU、防衛費の共同調達が優先課題=次期議長国ポーラ

ワールド

豪11月失業率は3.9%、予想外の低下で8カ月ぶり

ワールド

北朝鮮メディア、韓国大統領に「国民の怒り高まる」 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 2
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 3
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 5
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 6
    ノーベル文学賞受賞ハン・ガン「死者が生きている人を…
  • 7
    韓国大統領の暴走を止めたのは、「エリート」たちの…
  • 8
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 9
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 10
    統合失調症の姉と、姉を自宅に閉じ込めた両親の20年…
  • 1
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 2
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社…
  • 6
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 7
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 8
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田…
  • 9
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 10
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中