最新記事
BOOKS

【10刷!重版出来】超厳しいが「エモい」文章読本...3行で撃たれても、書きたくなるひとが続出している理由

2024年10月21日(月)17時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

常套句の弊害:他人の頭に自分の思考を委ねない

『三行で撃つ』が取り上げる文章の禁じ手に「常套句」がある。常套句を使うことが、考える行為の妨げになるからだ。常套句とは、クリシェ、決まり文句、「抜けるような青い空」「燃えるような紅葉」といった表現だ。

常套句を使うとなぜいけないのか。


あたりまえですが、文章が常套的になるからです。ありきたりな表現になるからです。しかし、それよりもよほど罪深いのは、常套句はものの見方を常套的にさせる。世界の切り取り方を、他人の頭に頼るようにすることなんです。【第4発 常套句・「としたもんだ表現」(53ページ)】

常套的な表現「抜けるように青い空」と書いた時点で、書き手はまともに空を観察していない、と著者は指摘する。

他者の目で空を見て「こういうのを抜けるような青空と表現するんだろうな」と感じている。他者の頭に自分を預けている。自分で考えることを放棄してしまっている。そうではなく、〈空を見て、なにかを感じたという、いつもとは違うその気分、特別な心持ちを、自分の五感で観察し、自分だけの言葉で描き出そうとする〉よう著者は説く。そうすることが、〈文章を書くことの最初であり、最後です〉と。


「言葉にできない美しさ」と、よく人はいいますが、それは言葉にできないのではない。考えていない。もっといえば、当の美しさを、ほんとうには感じてさえいないからなんです。【第4発 常套句・「としたもんだ表現」(56ページ)】

ビジネス実用書にとどまらない読み物の魅力

このように、著者は25の文章技術(ノウハウ)を紹介していくのだが、その技術を良し、あるいは悪しとする理由、思考の道筋に発見がある。また、文章読本である以上、文章がつまらなければ説得力に欠けるが、『三行で撃つ』は「書く」をめぐるエッセイとして読むことができるし、ノウハウを伝えるだけのビジネス実用書にはとどまらない、思想書の趣がある。ロジカル(論理)とリリカル(抒情)の両立、これが他の文章術の実用書にはない本書の2つめの魅力となっている。

実際、読者のほうも、25の技術を理解しながら読み進むほどに、言葉、文章、書くこと、表現すること、ひいては生きるということの意味を考え抜かざるを得なくなっていく。知らぬ間に、感じる力、思考する力が呼び覚まされていく。

金融
日本のウェルスマネジメントは欧米とどう違う?...MUFGが「今こそ必要」と考える理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

キーウに2夜連続の無人機攻撃、南部ザポロジエにもミ

ワールド

モルドバ国民投票、EU加盟方針を僅差で承認 政府は

ワールド

米国防長官がキーウ訪問、4億ドルの新たな軍事支援表

ワールド

トルコ宗教指導者ギュレン師、亡命先の米で死去 クー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米大統領選 イスラエルリスク
特集:米大統領選 イスラエルリスク
2024年10月29日号(10/22発売)

イスラエル支持でカマラ・ハリスが失う「イスラム教徒票」が大統領選の勝負を分ける

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 2
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「ATACMS」攻撃、無防備な兵士たちを一斉爆撃
  • 3
    「常軌を逸している」 トランプ、選挙集会で見せた「異様な姿」...認知能力への懸念の声が一気に高まる
  • 4
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 5
    「なぜその格好...」ルーブル美術館を貸し切った米モ…
  • 6
    日米をまたぐ保険のプロが語る、災害や政情不安、米…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    グロズヌイ「巨大爆発」の瞬間映像...「戦時」の不安…
  • 9
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 10
    騒然!中国がCCTV「台湾侵攻」番組で伝えた想定展開…
  • 1
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 2
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 3
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料を1ウォンも払わず 「連絡先分からず」と苦しい言い訳
  • 4
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 5
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 6
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 9
    「メーガン・マークルのよう」...キャサリン妃の動画…
  • 10
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 4
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 5
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 6
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 7
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 8
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 9
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 10
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中