最新記事
BOOKS

【10刷!重版出来】超厳しいが「エモい」文章読本...3行で撃たれても、書きたくなるひとが続出している理由

2024年10月21日(月)17時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

思想が深まる:私たちはなぜ書くのか?

たとえば、なぜ私たちは文章を書こうとするのだろう? 『三行で撃つ』では1冊を通して、その問いが貫かれるが、解をひとつだけ紹介しよう。


文章を書くとは、表現者になることだ。表現者とは、畢竟、おもしろい人のことだ。おもしろいことを書く人がライターだ。【第22発 文章、とは(277ページ)】

著者は徒然草の「雪のおもしろう降りたりし朝(あした)」という一節を引き、〈目の前が開け、周囲が明るくなることを古来、日本人は「おもしろい」と表現してきた〉と解説する。そして、言う。


鎌倉時代の粗末な庵では、早朝の寒気など、震え上がるだけのものだったに違いない。雪の朝なんてだれも「おもしろい」と思っていやしない。吉田兼好が〈発見〉した、おもしろさなのだ。

おもしろさを見つけられる人は強い。それは、世界がおもしろくないからだ。

だから、人類は発見する必要があった。歌や、踊りや、ものがたりが、〈表現〉が、この世に絶えたことは、人類創世以来、一度もない。【第22発 文章、とは(280ページ)】

書くことで、自分に〈なる〉

誰もが生きていると、つらいことや理不尽を繰り返し経験する。しかし、それを言語化するとき、ひとは一瞬つらさを忘れることができる。


言葉で像を結ぼうとするその頭で、もはや「嘆く」ことはできない。「悲しい」という言葉では表せない悲しさを、なにか別の言葉に結晶させようとしているそのときに、人は、同時に悲しめない。悲しさを、いったんわきに置かなければ、言葉は現前しない。【第24発 書く、とは(297ページ)】

『三行で撃つ』を読めば、ひとは「書くこと」で、自分を救うことができると分かってくる。


世界は、よくも悪くもなりはしない。それでいい。ただ、世界の、人間の、真実を見つめることはできる。(略)

自分の書いている文章が、当の自分を追い越す。文章が、自分の思想、感情、判断を超えていく。またそうでなければ、文章など書く必要がどこにあろう。【第23発 言葉、とは(290ページ)】

過去の自分を乗り越える。読み終える頃には、自分も何か書いてみたくなっているし、書くことの力に希望を見出せるはずだ。書きたくなる。自分に〈なる〉ために。

◇ ◇ ◇

三行で撃つPOP

三行で撃つPOP


近藤康太郎(こんどう・こうたろう)

作家/評論家/百姓/猟師。1963年、東京・渋谷生まれ。1987年、朝日新聞社入社。川崎支局、学芸部、AERA編集部、ニューヨーク支局を経て、九州へ。新聞紙面では、コラム「多事奏論」、地方での米作りや狩猟体験を通じて資本主義や現代社会までを考察する連載「アロハで猟師してみました」を担当する。

著書に『ワーク・イズ・ライフ 宇宙一チャラい仕事論』『三行で撃つ〈善く、生きる〉ための文章塾』『百冊で耕す〈自由に、なる〉ための読書術』(CCCメディアハウス)、『アロハで田植え、はじめました』、『アロハで猟師、はじめました』(河出書房新社)、『朝日新聞記者が書けなかったアメリカの大汚点』、『朝日新聞記者が書いたアメリカ人「アホ・マヌケ」論』、『アメリカが知らないアメリカ 世界帝国を動かす深奥部の力』(講談社)、『リアルロック 日本語ROCK小事典』(三一書房)、『成長のない社会で、わたしたちはいかに生きていくべきなのか』(水野和夫氏との共著、徳間書店)他がある。


近藤康太郎『三行で撃つ』

『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』
 近藤康太郎[著]
 CCCメディアハウス[刊]

20241029issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年10月29日号(10月22日発売)は「米大統領選 イスラエルリスク」特集。カマラ・ハリスが失う「イスラム教徒票」が勝負を分ける

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、150円台後半 米大幅利下

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P下落、国債利回り上昇で

ワールド

米国防長官がキーウ訪問、4億ドル追加支援表明 無人

ワールド

シリア首都にイスラエルのミサイル攻撃、ヒズボラ送金
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米大統領選 イスラエルリスク
特集:米大統領選 イスラエルリスク
2024年10月29日号(10/22発売)

イスラエル支持でカマラ・ハリスが失う「イスラム教徒票」が大統領選の勝負を分ける

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 2
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「ATACMS」攻撃、無防備な兵士たちを一斉爆撃
  • 3
    「常軌を逸している」 トランプ、選挙集会で見せた「異様な姿」...認知能力への懸念の声が一気に高まる
  • 4
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 5
    「なぜその格好...」ルーブル美術館を貸し切った米モ…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 8
    日米をまたぐ保険のプロが語る、災害や政情不安、米…
  • 9
    グロズヌイ「巨大爆発」の瞬間映像...「戦時」の不安…
  • 10
    騒然!中国がCCTV「台湾侵攻」番組で伝えた想定展開…
  • 1
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 2
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 3
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料を1ウォンも払わず 「連絡先分からず」と苦しい言い訳
  • 4
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 5
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 6
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 9
    「メーガン・マークルのよう」...キャサリン妃の動画…
  • 10
    「常軌を逸している」 トランプ、選挙集会で見せた「…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 4
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 5
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 6
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 7
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 8
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 9
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中