最新記事
マイホーム

ミレニアル世代の住宅購入が増加、価格は今後5~10年は沸騰状態に!?

THE MILLENNIAL SHIFT

2024年8月28日(水)11時18分
ジュリア・カーボナロ(本誌記者)
ミレニアル世代の参入で住宅市場は沸騰状態

ILLUSTRATION BY MOOR STUDIO/ISTOCK

<人口最多世代のミレニアル世代(1981~96年生まれ)のマイホーム購入により、アメリカでは空前の住宅需要と大幅な供給不足が起きている>

家を買うタイミングに恵まれない......。アメリカのミレニアル世代(1981~96年生まれ)の多くにとって、それが悲しい「運命」だ。

2007~08年の世界金融危機で米経済と住宅市場が大不況に陥った当時、この世代は上の年齢層でもまだ30歳未満。下の年齢層がマイホーム購入適齢期になった頃には、住宅市場の好況で価格が高騰し、手が届かなくなっていた。


だが不利な経済的条件にもかかわらず、待つのにうんざりした彼らは、とにかく家を買うことにした。その遅れてやってきた大量参入が、住宅市場全体を揺るがしている。

「今や、前例のない規模の住宅需要が起きている。これは一時的流行でもバブルでもなく、人口統計学的な現実だ」と、インディアナ大学ビジネス研究センターのフィル・パウエル所長は言う。

もっとも、価格上昇の原因はミレニアル世代だけではない。ベビーブーム世代(46~64年生まれ)も価格圧力を加えていると、投資調査会社ネッド・デービス・リサーチのチーフエコノミスト、アレハンドラ・グリンダルは語る。

「(ミレニアル世代に次いで)人口が2番目に多く、購買力が高いこともあって、住宅需要を膨らませている」

「(ベビーブーム世代は)高齢者施設への入居を望まず、先行世代よりはるかに長く自宅で暮らし続けるつもりだ。セカンドハウス志向も強い」

全米不動産協会によれば、21年当時、初めて家を買う人の平均年齢は33歳だったが、ミレニアル世代がより手頃に住宅を購入できるタイミングを待っていた影響で、22年には36歳に上昇した。

20年後に待つ暗い未来

「先の不況以前は建設過剰で、不況後は新たに家を建てる意欲は低いと、資本市場や金融機関は見なした。将来的な世帯形成を度外視したため、住宅供給が大幅に不足している」と、インディアナ大学不動産研究センターのセーラ・コアーズ副所長は指摘する。

コアーズによれば、ミレニアル世代は「破壊的世代」だ。人口割合が大きく、世帯形成率は桁外れなのに、住宅供給は記録的な不足状態。「そうした事情が極端な購買行動を生み出している」という。

彼らの需要に応えるため、今後は住宅が数多く建設されるはずだと、コアーズは考えている。「その後の世代は規模がより小さいため、うまくいけば住宅市場が調整されるだろう。値頃感の不足が大問題になっているからだ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中