「人民元キャリートレード」とは?...円とは何が違うのか
8月13日、円キャリートレードの巻き戻しに伴う世界的な株価の急落を機に、人民元に注目が集まっている。2022年撮影(2024年 ロイター/Florence Lo)
円キャリートレードの巻き戻しに伴う世界的な株価の急落を機に、人民元に注目が集まっている。人民元も低金利の資金調達通貨として幅広く使われているためだ。
8月に入り人民元の対ドル相場は2%上昇したが、トレーダーの話では人民元キャリートレードは特異で、早期に巻き戻される公算は小さい。
人民元キャリートレードとは
通常のキャリートレードでは、投資家は円やスイスフランといった低金利通貨で資金を借り入れ、高利回りの資産に投資する。投資先は大半が通貨だが、株式の信用取引に資金が使われることもある。
人民元キャリートレードも同様の仕組みだが、人民元は完全な兌換性がないため、制限がある。
人民元キャリートレードの大部分を占めるのは、ドルで現金をため込んでいる中国の輸出企業による取引。次に、外国人が人民元を借りて中国本土に投資するパターンがある。第3のパターンは、低金利のオフショア人民元を使ってドルや他通貨建ての債券に投資する取引だ。
変遷
2022年まで何年間も、中国の金利は米国よりも高かった。22年に米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締めを開始した一方、中国は低迷する経済を支援するため金融緩和スタンスに移行した。
ドルの金利が大きく上昇すると、中国の輸出企業はドル建て収入をドルのまま維持すると、年間で5%もの金利を稼げることに気付いた。当時、人民元建て預金の金利は皆無に等しかった。
輸入企業によるドル資金の抱え込みは、22年4月以来の人民元安の主因だ。
人民元の下落により、外国人は人民元・ドルのオンショアのスワップ取引により大幅なスプレッドを稼げるようになった。外国の投資家は、低金利のオフショア人民元を借り、ドルなどの通貨に転換して株式や債券に投資することが可能となった。投資家は資産のリターンに加え、人民元安によって為替差益も得られるようになった。