まじめに頑張る人ほど苦戦...「できる営業」は何が違う? 2万人調査で見えた「できない営業」の問題点
本音を覆い隠す5つの「購買者の仮面」
──本書では、「購買者の仮面」には5種類あると書かれています。簡単にご説明いただけますか。
まず1つ目は「はぐらかしの仮面」です。典型的なのは「まだ予算が決まっていません」など、ヒアリングに対するあいまいな回答です。多くの営業はこう言われると真に受けて、金額を聞いてはいけないと思い質問を控えてしまいます。でも、本当は教えたくないのではなく「教えることで不利益があったらイヤだな」という損得の問題なのです。なので、教えた方が得だということを示した上で、聞き方をちょっと工夫すればフィットした提案ができます。
2つ目は「とりあえず忙しいので資料だけ送ってください」という「忙しさの仮面」です。まじめな人はただ資料を送って待ちますが、それだけでは当然、お客様からの連絡はきません。
お客様の本心は、シビアですが「レベルの低い営業に時間を使いたくない」です。だから、資料を送る動作の中に、時間を使う価値があるという根拠を示す必要があります。具体的には、端的にお客様の課題を探る質問をする、費用対効果の高さを資料でしっかり示すなどの工夫をするわけです。「時間を使う価値」にフォーカスすることで、提案機会をいただくことができます。
3つ目は「いきなりの仮面」で、「とりあえず、すぐ見積もりをください」と言われるケースです。他の会社からの提案を聞いて社内承認をあげようとしたら、上司から「他の見積もりも取って比べるように」と言われて慌てて問い合わせてくるお客様ですね。
ここで、多くの営業は「そんなにすぐは良い提案ができないので、ヒアリングやディスカッションの機会をいただけませんか」と打診して断られます。いきなり「提案内容」で勝負しようとしてしまうわけです。
この場合、お客様の本音は「話が早い営業と進めたい」、要は頼れる存在であるかどうかが大事なんです。であれば、最初はレスポンスの「スピード」で勝負して、お客様に「この営業は打てば響く営業だ」と思ってもらえる高速ラリーに持ち込んでから、提案内容をブラッシュアップしていくのが有効です。
4つ目は「もっと安くなりませんか?」という「とにかく安くの仮面」。多くの営業はがんばって社内で値引き交渉しようとしますが、お客様の本音は「買う際の判断基準がわからない」なんです。どう判断していいかわからないから、とりあえず価格を判断基準にしているんですね。ですから「とにかく安くの仮面」の場合は、言われたまま値引きをするより判断基準を作りにいく対応をしないと、延々と値引きし続けることになります。