10歳のとき、命を懸けた「冷たい社会への復讐」を誓った...泉房穂氏が語る、成功を導く成功を導く「力の源泉」
でも、私がそういう抵抗をよそに実行して、しかもそれが市民にウケると、職員も当たり前のように提案してくるようになりました。たとえば、明石市では、小学校の女子トイレに生理用ナプキンも置いています。それ自体はニュージーランドで始まったことですが、それを知った職員が、「明石市でやってもいいですか」と言いに来たんです。
そんなふうに、ほかでの成功事例を参考にして、明石に合うようにアレンジする。養育費の立替えは、ヨーロッパでは1990年代から、アジアでは韓国が6、7年前に始めています。先に韓国で実現できているなら隣の日本でもできるはず。狭い日本から飛び出して地球儀を見る感覚が必要です。
──それはビジネスパーソンにも役立つ観点ですね。新しいベンチャーを始めるときは特に、世界中の事例を参考にしていいとこ取りをしていくことはよくありますから。
どこかのエリアで一定の成功を収めているものには、ヒントがたくさんありますね。
それと、もう1つ私が意識しているのは、市民、現場の声を聴くこと。コロナ禍では、国の動きをよそに、とにかく街を歩きました。本当に悲鳴のような声をたくさん聞きました。
たとえば、学費を払えなくなった大学生が「コロナ中退」になってしまうという声があったので、明石市が立て替える施策を考えました。最初は50万円を上限とした大学生への学費支援からスタートしましたが、これは失敗しました。50万円では足りなかったんです。すぐに60万円に上げました。理系大学ではそれでも足りなかったので、100万円に変えた。そして、大学生限定だった対象を、専門学校生や大学院生にも広げています。
最初にやったことがハズレた場合は、施策側に市民を従わせるのではなく、現場のニーズに合わせて施策を変える。ニーズとずれたときは、こちらが「ごめんなさい」をします。国はこれが意外とできない。一旦決めたことは「自分たちは間違えていない」という態度になりがちです。それでは失敗してしまう。現場の声を基礎に据えるべきなんです。これはビジネスでも同じでしょう。