独自技術で、ファッション界に挑戦する京セラ──新製品はいかに市場に革命をもたらすのか?
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99%節水可能なインクジェット捺染プリンター「FOREARTH(フォレアス)」
<ファインセラミックスを中心に独自技術で、様々な業界の変革を支えてきた京セラ。次なる目標は「ファッション業界」の革新。99%節水のインクジェット捺染プリンター「FOREARTH(フォレアス)」で、新たな変革に挑む>
「誰もやっていないことをやるのが宿命」――創設者稲盛和夫の信念のもと、ファインセラミック部品、半導体関連部品、電子部品、太陽電池、通信端末や複合機など多方面の分野でさまざまな独自の技術を生み出し、業界の課題解決に貢献してきた京セラグループ。同社が新たな独自技術を携えて次に挑戦する目標が、「ファッション業界の環境革命」だ――。
京セラは今秋、ほぼ水を使わずに生地を染色するインクジェット捺染プリンター「FOREARTH(フォレアス)」の販売を開始する。衣類などテキスタイルに染料を利用して模様を印刷する従来の染料アナログ捺染方式では、生地1キロ当たり153ℓの水を消費する。一方でFOREARTHは独自に開発した顔料インクを使用することで、0.02ℓまで水の使用を抑えることを可能にした。(京セラ調べ 2022年)
ファッション業界では、布に色模様を染め出す捺染時の、水の大量使用や水質汚染の解決が長年の課題となっている。こうした環境問題を背景に、FOREARTHの「水の使用を限りなくゼロにする」新たな捺染技術に大きな期待が寄せられている。
この京セラの「FOREARTH」の世界初のお披露目の場となったのが、伊ミラノで開催された国際繊維機械展「ITMA2023」(6月8日~6月14日(現地時間))だ。世界最大級であるこの展示会には、今年は繊維、紡績や印刷技術等1,709社が一堂に会し、世界143カ国から11万人以上が訪れた。
同展示会では146社のプリンターが展示されたが、なかでも「FOREARTH」は一際存在感を示した。黒いスタイリッシュな外観のプリンターが、1分間に幅1.8m×長さ2.3mの速さで滑らかに、複雑なデザインを色鮮やかに印刷していく――。この様子に、多くの来場者が足を止めて見入った。また、周辺には「FOREARTH」で印刷された綿・シルク・ポリエステル・ナイロン・混紡等多種多様な素材の布が展示され、その手触りの柔らかさを高く評価する来場者の声が聞こえた。
「節水を最大限まで可能にして、シルクのようなデリケートな生地にもこんなに触り心地よく印刷ができる。これは、衣類印刷の未来だと思います。」――感動して、こう語るのは環境に配慮したファッションの創作で注目されるイタリア人若手デザイナーFlora Rabitti氏だ。「環境を守り、制限なく創作ができるので、ファッションの可能性が無限に広がります」と、続ける。