変動相場制は新興国の万能薬にあらず──元チリ財務相が解説
FLEXIBLE RATES NO PANACEA
変動相場制が万能薬ではなく、以前からの問題がまだ残っていることを考慮すれば、新興諸国の政府は金融市場の安定を維持するために別な対策を講じる必要がある。重要なのは国民の貯蓄を増やし、国内の資本市場を育てることだ。そうすれば他国からの借金も減る。そのためには適度な財政引き締めも必要だ。財政赤字が過度に膨らめば経常赤字も増え、外国資本への過剰依存に陥りかねない。
多くの新興諸国は外部の保険に頼らず、もっぱら「自家保険」で将来的なリスクに備えている。だが安心できるまで外貨準備を積み上げるやり方は、個別には合理的かもしれないが、新興諸国全体を見渡せば、あまり意味がない。
確かに、FRB(米連邦準備理事会)と通貨スワップ協定を結べるような一握りの新興国は、リスクをある程度まで他国に分担してもらえる。IMFに予防的流動性枠を認められているいくつかの国も同様だ。だが、その他の新興国にはリスクを分担してもらえる機会が限られている。
いい例が新型コロナの危機だ。IMFは当初、新興・途上国への支援額を2兆ドルと見積もっていたが、実際に条件を満たして融資できた額は1600億ドルにすぎない。もっと賢いやり方があるはずだ。
アンドレス・ベラスコ
ANDRES VELASCO
経済学者。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス公共政策大学院学部長。コロンビア大学、ハーバード大学教授を歴任。2013年にはチリ大統領選に立候補している。
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